第73話 case73
『なんなんだよこの魔力… 今までこんな魔力、感じたことねぇぞ… キマイラよりはるかに上だ…』
くるみは今までに感じたことがない魔力を前に、武器を持つ手がガタガタと震えていた。
『どうする? どうしたらいい? ノリちゃんたちが来るまで、一人で持ちこたえられるの?』
不安に思えば思うほど、武器を持つくるみの手はガタガタと震えて行く。
それに気が付いた亮介が、くるみの手に自分の手を添え「大丈夫だよ。 俺がいるんだから、一人じゃねぇだろ? それよりこれ飲めよ」と言い、蓋の空いたマナポーションを差し出してきた。
くるみはそれを受取ろうとするが、手が震えてうまく受け取れないでいる。
亮介は「ったく」と言った後、マナポーションを口に含み、くるみの顔を自分の方へ向かせた後、唇を重ね、口移しでマナポーションをくるみに飲ませた。
背後から女の子たちの悲鳴が聞こえる中、亮介はゆっくりと唇を離し「後で殺されるわ」と言うと、武器を構えた。
くるみは小さく笑った後、「3回殺す」と言い、武器を再度構え直す。
不思議とくるみの手の震えはピタッと止まり、くるみは足を開いて大きく息を吐いた。
『一人じゃないか… なら持ちこたえられるかもな…』
倒れていたはずの魔獣は、完全に凍結し、徐々にその体を大きさくしていく。
すると突然、魔獣は白く光り始め、くるみは氷の壁を作り出した。
その直後、魔獣の放った光は次々に大爆発を起こし、くるみの氷の壁は、爆発が起きるたびにその勢いに押され、徐々に数メートルほど後ろに下がる。
「なんじゃこりゃ… 爆発が… 止まらん…」
くるみが苦しそうに言うと、亮介はくるみを包むように氷に手を当て、押し返そうと力を籠める。
が、次々に起きる爆発を前に、2人は押し返されるばかりだった。
「クッソ… なんなんだよこれ…」
氷を押さえていた亮介が苦しそうに言うと、目の前に手が伸び、氷の壁を押し返す。
「セイジ君!!」
「ったく、気持ちよく昼寝をしてたって言うのに… 特種幻獣なんか出しやがって… 姫、亮介、もう少し左に寄れ。 そこは太一の場所だ」
2人は氷の壁を押しながら左によると、太一が真ん中に立ち、盾で氷の壁を押し返した。
「姫ちゃん! マナ補充してきな!! もうすぐ枯れるよ!!」
太一の言葉にくるみは自然と笑みが零れ、急いでその場を後にする。
すると、ノリが「お帰り~」と言いながら手を振り、マナポーションを渡してきた。
くるみがマナポーションを飲む中、ノリは「ここの転送装置、壊れてんじゃないの? この前も2重出たんでしょ?」と切り出した。
「かもね。 あ、先生に止められなかった?」
「ん? 顔パスですぐに通してくれたよ? てか君ら、さっさと逃げな。 死ぬよ」
ノリが言うと、背後にいた人だかりは上に行ったが、葵と千鶴、アイカと悠馬だけはその場から動こうとしなかった。
「戦闘、拝見させてください!!」
千鶴が言うと、くるみはクスっと笑った。
「命の保証はしないよ? あ、でもぼくちゃん入るから大丈夫か。 ぼくちゃん、念のため、そこの4人に補助魔法かけといて。 あと、間違えても通路から出ない事。 200%死ぬよ」
「ありがとうございます!!」
千鶴がそう言いながら敬礼をすると、ノリはクスっと笑い「スペシャルショウタイムと行きますかぁ」と言いながら立ち上がり、くるみが「イエッサー」と答えながら立ち上がる。
くるみが両刃アックスを肩に担ぐと、2人は肩を並べて歩き始めた。
葵は氷の壁に向かって、堂々と歩く2人を、憧憬の眼差しで見ていた。
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