第75話 case75
くるみと亮介は壁の中で「痛ぇ」と言いながらゆっくりと起き上がる。
「お前さ… もうちょい周り見ろよ…」
亮介はそう言いながらくるみを見ると、くるみの装備していた鎧が壊れていることに気が付き「鎧、壊れてるぞ? 替えあるのか?」と聞いた。
くるみは「あ、本当だ。 気に入ってたのになぁ…」と言いながら、黒い幻獣装備に身を包む。
「…なぁ、それって幻獣の角、使った系?」
「ん? 使ったよ? なんで?」
「その幻獣の角、俺んじゃね?」
「違うよ? あたしのだよ」
くるみはスッと立ち上がり、亮介は「マジかよ…」と言い、ため息をつきながら立ち上がった。
すると、くるみは亮介の体に抱き着いた後「お詫び」と言い、さっさと行ってしまう。
亮介はクスっと笑い「全然足りねぇっつーの」と言いながら、くるみの後を追いかけた。
くるみと亮介が壁の穴から出ると、キマイラの蛇とヤギは半分まで回復していた。
くるみが咄嗟に飛びかかった瞬間「やめろ! 無意味だ!」と言うセイジの怒鳴り声が聞こえ、くるみはキマイラを素通りし、反対側に着地した。
「姫、亮介、回復してこい」
2人はセイジにそう言われ、通路に行くと、葵は二人を回復し、2人は「サンキュ」と言った後、ポーションを飲んでいた。
「これ、永久に終わらないのかな?」
ノリの隣で座っていた太一が呟くように言うと、階段の方から「こちらです」と言う声が聞こえ、振り返ると教師がウォーリア賢者とマジックナイト賢者を案内していた。
「おっさんとイケメンにいちゃん!!」
くるみが思わず声を上げると、ウォーリア賢者は「よお小娘と小僧! 最近来ないから寂しかったぞ!」と声を上げて笑い始める。
「どうしたの?」とくるみが聞くと、マジックナイト賢者が話し始めた。
「2重ダンジョンが開いたって要請があったから退治しに来たんだよ。 ここのゲート、完全に壊れてるね。 幻獣あたりかと思ったら、特種キマイラとはねぇ… セイジ君は?」
くるみがセイジの事を指さすと、マジックナイト賢者はセイジを呼び、再度話始める。
「あのキマイラ、ライオンを先にやらないと再生するよ。 ただ、ライオンを先に遣ろうとしても、蛇とヤギが邪魔をして、満足に攻撃を当てられない。 方法としては、3頭同時に殺らないと、一生終わらないよ」
「同時にか… 姫、蛇を頼めるか? 遠距離から攻撃して、隙を見て叩き込め」
「イエッサー」
「亮介、ヤギを頼む。 後ろに俺が付く」
「ういっす」
「ノリ、太一、ライオンを頼んだ」
「イエッサー」
「僕らはどれを狙ったらいい?」
マジックナイト賢者の言葉に、5人は驚き黙り込んだ。
「そのために来たんだけどな。 もちろん、素材と魔法石は5人で分けていいよ」
セイジはクスっと笑った後、立ち上がり、大声で切り出した。
「作戦変更だ! 蛇は姫と俺で行く。 ヤギはノリと太一、マジックナイト賢者の3人、ライオンは亮介とウォーリア賢者だ。 なるべく頭を外に引きつけて、胴体を動けなくしろ。 隙を見て一斉に叩く。 良いな!!」
「「ういっさ~~」」
全員は勢いよく立ち上がりながら返事をし、ゆっくりと歩き始めた。
「くるみさん! 絶対に死なないで!!」
葵が叫ぶと、くるみは顔だけ振り返り「フラグ立ててんじゃねーよアホ」と言いながら笑い、ゆっくりと歩き始めた。
ノリはくるみに「ファン?」と聞き、くるみは「いんや、ただのクラスメイト」と答える。
「実はファンなんじゃないのぉ?」
「さぁね。 パシリかもよ?」
「最近の高校生は怖いわぁ」
2人は笑いながら所定に位置に向かって行く。
「か… かっこいい…」
千鶴はくるみを見つめながら完全に目をハートにし、アイカと悠馬は悔しそうに拳を握り締めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます