第70話 case70
その日の放課後、くるみは亮介と共にギルドへ向かおうとすると、アイカとミナが立ち塞がった。
「ちょっと付き合いなさいよ」
アイカが睨みながら言うと、くるみは「嫌だね」と言った後、亮介を抱えて空を飛ぶ。
亮介は、アイカの背後に悠馬がいることに気が付いていたが、くるみに抱えられて飛んでしまったため、言葉を交わすことはなかった。
集会所についてすぐ、くるみはりつ子の隣で眠っているゴロに気が付く。
くるみが「あれ?」と声を出すと、ゴロはすぐに起き上がり、くるみの肩に飛び乗った後、亮介に向かって威嚇をし始めた。
りつ子はくるみに向かって「もぅびっくりしたわよ? ギルド会費徴収しに行ったらその子がいるんだもん」と、少し呆れながら言う。
「え? いきなりばれた?」
「当り前よ。 まぁS級になればほとんどのギルドにペットがいるし、珍しい事ではないけどね。 ちゃんと首輪つけておかないと、攻撃されちゃうかもよ?」
りつ子はそう言うと、くるみに向かって首輪と掌を差し出し「3万ね」と切り出す。
くるみは泣く泣く魔法石を出し、肩を落としながらギルドルームに入った。
ギルドルームに入ると、太一がくるみに切り出す。
「この子、髭に触手なかった? クアールだったら触手があるはずなんだよね」
「なかったよ? もしかしたら、食べられちゃってたのかも…」
「それで凶暴化しなかったのかな… 白って事は氷属性なのかも…」
太一はくるみの膝に座るクアールを見て、ブツブツ言い始めていると、ノリとセイジがギルドルームに入ってくる。
セイジは少し話した後、「行くか」とみんなに声をかけた。
「レアでもいるの?」とノリが聞くと、セイジは「いや、クアールの餌、取りに行くぞ」と言い、さっさとギルドルームを後にし、ノリは「なんだかんだ言って、一番可愛がってるのはあいつかもねぇ。 ソファで一緒に昼寝してたし、昨日なんて一緒にシャワー浴びてたのよ?」と言いながら、ギルドルームを後にしていた。
くるみはゴロを抱きかかえ「昼寝ってずるい~」と言いながらセイジたちの後を追い、太一と亮介もその後を追っていた。
ゲートをくぐると、クアールは元の姿に戻り、太一とセイジ、ノリの3人は「おお」と声を上げる。
昨日よりも綺麗で艶のある毛並みと、ヒョウ柄の斑点は、その存在感を放っていた。
くるみは「ゴロちゃん、行くよ」と言うと、亮介から貰ったヘアピンを装備し、魔獣の群れの中に駆け出す。
くるみとクアールは飛び跳ね、楽しそうに戦う姿を見ながら、ノリと太一は「ペット欲しいなぁ」と羨ましがり、亮介とセイジは嫉妬心を滾らせていた。
『魔獣の分際で俺のくるみに馴れ馴れしくしやがって… あのヘアピン、俺があげたんだぞ…』
『ゴロちゃん行くよだと? 日中誰が面倒を見てると思ってんだあいつは… 俺は今日、朝からモフモフして、一緒に昼寝までしたんだぞ? 昨夜だって一緒にシャワーを浴びたんだぞ? それを何なんだあいつは… 馴れ馴れしい…』
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