第69話 case69
授業が終わり、くるみが教室を移動しようとすると、ドアの前にアイカとミナの2人が立っていた。
『うっぜ』
くるみはそう思いながらポケットに手を入れ、ゆっくりとドアの向こうに行こうとした瞬間、アイカの足が伸び、くるみの足を引っかけようとした。
が、くるみは風で宙に浮き、そのまま階段の手前まで飛んで行ってしまう。
アイカはバランスを崩して転んでしまい、くるみは振り返らないまま階段を下りていた。
『くっだらね』
くるみがそう思いながらウォーリア訓練場に向かうと、中には悠馬が待ち構えるように立ち、部屋の隅にはステッキを装備した葵が立っていた。
「手合わせしようよ」
くるみは悠馬に言われたが、悠馬に背を向け、訓練場を出て行ってしまう。
悠馬は慌てて追いかけたが、くるみは窓から飛び出し、空を飛んでどこかへ行ってしまった。
『どいつもこいつもくだらなすぎる…』
くるみは屋上にある倉庫の上で、足を組んで横になり、ボーっと空を眺めている。
『学校辞めて、ノリちゃんとセイジ君みたいにハンター1本になろっかな… そうすれば稼げるし、ゴロちゃんとずっといられるし、面倒なこともないし、毎日楽しく過ごせるよなぁ…』
そう思いながらボーっとしていると、「あれ?不良娘がいる」と言う声が聞こえた。
顔だけ上を向くと、亮介が梯子を上り、隣に座りながら聞いてきた。
「テンション低くね?」
「学校、つまんない」
「言えてる。 ハンター1本になりたいけど、卒業しないとライセンス貰えないんだよな」
「そうなの?」
「この前授業で言ってたじゃん。 今、俺らは特例が出てるから、ダンジョンもギルドもOKな状態なんだと」
「なーんも聞いてないや」
「だろうな」
亮介はそう言うと、しばらくの沈黙の後、再度切り出した。
「…俺ってそんなに野蛮に見える?」
「急にどうしたの?」
「いや、どうなのかなって思ってさ」
「野蛮でも良いんじゃない? ウォーリアらしいし。 それに、あたしを守れるのはたいっちゃんと亮ちゃんくらいしかいないよ。 あ、ゴロちゃんとノリちゃんとセイジ君もいるか」
「欲張りだな」
「事実。 あ、そう言えば、この前助けてくれてありがとね。 おぼれた時、亮ちゃんが助けてくれたんでしょ? お礼言うの忘れてた」
亮介はその言葉を聞いた後、俯きながら小さく笑い、「おう」とだけ言った後、くるみの横に寝ころんだ。
心地いい風が吹く中、2人は並んで横になり、しばらく黙ったまま、流れる雲を眺める。
2人は何も考えず、心地いい風に吹かれていると、「あ、そうだ」と亮介は思い出したように声を上げて起き上がり、インベトリを弄り始める。
「これ、この前できたからやるよ」
亮介が差し出してきたのは、頭装備である、パールホワイトの小さなヘアピンだった。
「この前、【???】から出てきたんだ。 魔力アップついてるし、くるみ、頭装備付けてないからさ。 いらなかったら、りつ子さんに売っていいから」
くるみは起き上がりながらヘアピンを受け取るなり、すぐに右耳の上にピンを着けた。
「頭装備、後回しにしちゃってたんだ。 ありがとね」
「おう」
心地いい風が吹く中、2人は微笑み合っていた。
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