第67話 case67

くるみと魔獣は先に進み、亮介は苛立ちながらその後を追っていた。


『ふざけんなあのクソ魔獣… 俺が告ったのに流されたじゃねぇかよ…』


2人と1匹はそのまま歩き続け、少し開けた場所にたどり着いた。


くるみは武器を構え「ゴロちゃん、下がってな」と言い、亮介は武器を構えながら「ゴロちゃん?」と聞く。


魔獣はくるみの言う事を聞くように、くるみから離れた場所に移動していた。


すると、壁の中から大きすぎるくらい大きなオオカミの魔獣が現れ、2人は自然と武器に力を籠める。


オオカミの魔獣はいきなりくるみに向かって飛びかかり、くるみは風で攻撃を躱すと、亮介が魔獣に飛びかかる。


完璧すぎるくらい完璧な2人の連携を、魔獣はじっと見ていた。



「おりゃあああ」


くるみが叫びながら回転し、アックスを振りぬこうとすると、突然魔獣の目が赤く光り、口を大きく開けようとする。


『魔法!? ヤバい!!』


2人がそう思った瞬間、くるみが助けた魔獣が、大きな魔獣の口に噛み付き、魔獣の口を閉ざした。


魔獣は鼻と耳から炎を上げ、大きく膨らんだ後に大爆発を起こし、魔法石へと姿を変える。


「ゴロちゃん!!」


くるみが叫ぶと、ゴロちゃんと呼ばれた魔獣は、煙の中から姿を現し、くるみの体に擦り寄った。


「良かった。 助けてくれたんだね。 ありがとう」


くるみはそう言いながらゴロちゃんに抱き着き、亮介は呆然としている。


「魔獣が人を助けた? あり得ねぇだろ…」


亮介が小さく呟くと、金色の蝶がヒラヒラと舞い、ゲートを開いた。


「ゴロちゃん、もう帰らなきゃだからお別れだね。 元気でいるんだよ」


くるみはそう言いながら、座っているゴロちゃんの頭を撫でる。


すると、ゴロちゃんは立ち上がり、ゲートの中に飛び込んだ。


「あ!ゴロちゃんダメだって!!」


くるみは急いでゴロちゃんの後を追い、ゲートの中へ行き、亮介も急いでその後を追いかけた。



2人がゲートをくぐると、集会場にたどり着き、2人は辺りを見回していた。


「どうした?」


教師の質問に亮介が答えた。


「白い魔獣がゲートを通ったんですけど…」


「ああ。 心配ない。 魔獣はゲートの中に入ると消滅するからな」


「え?この前のキマイラは?」


「あれはヤギがゲートを作り上げたんだろう。 それ以外に考えられん」


くるみは亮介と教師の話を聞いて「消滅しちゃったんだ…」と呟き、落ち込んだまま、ギルドルームに向かった。



亮介は落ち込んだくるみの後を追いかけ、ギルドルームに入ってすぐ、くるみに切り出した。


「くるみ? 大丈夫?」


「…いなくなっちゃった」


亮介は黙ったまま、くるみの背後からそっと抱きしめ「俺じゃダメ?」と聞く。


その瞬間、亮介の腕に激痛が走り、亮介は「痛ぇ!!」と叫びながら手を離す。


くるみはびっくりして振り返ると、亮介の腕はバックリと裂け、血を流していた。


それと同時に、セイジとノリがギルドルームに入り、ノリは「また喧嘩?」と言いながらソファに座る。


「あたし何にもしてない!」


くるみの言葉に、亮介が「じゃあなんで血出てんだよ!」とムキになって言うと、くるみの胸の間から、小さな白いヒョウ柄をした猫が顔を出した。


「クアール!? 姫、お前それどうした!?」


「知らない! わかんない!!」


くるみはパニックになりながら答えると、クアールと言われたそれは「にゃ~ん」と声を上げる。


「やっだぁ!! 超きゃわわ~~」


ノリは目を輝かせながらくるみに近づき、亮介はペアダンジョンの中で起きたことをセイジに話し始める。


「モフモフして気持ちいい!! 超きゃわわ~~! 姫の谷間に蹲るって、あんた相当のやり手ねぇ。 柔らかいのに挟まれて気持ちいいのかな? このスケベ猫」


ノリはクアールの頭を撫でながら言うと、それを聞いた亮介はこぶしを握り締め「くるみ、そいつ出せ。 ぶっ殺す…」と、怒りを露わにしていた。

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