第64話 case64

ギルドルームに戻った後、くるみはセイジにアクセを返しながら聞いた。


「これなぁに?」


セイジは受け取りながら答える。


「セット装備。 3つ装備することで、魔力アップの効果が出る。 さっきのヒールはセット効果が発動してたんだよ」


「ほ~! 便利なものがあるのねぇ」


「ハンターの負担を軽減するために、最近作られたらしい。 今は魔力アップしかないが、そのうち物理もできるんじゃないか? ノリ、ちょっと付き合え。 A級の実力見に行くぞ」


「うぃっさ~」


ノリは返事をしながらセイジの後を追い、残された3人は帰宅していた。



数日後、教壇に立つ教師は「昨日も言ったけど、これから集会所に行ってペアダンジョンに入る。 準備が出来たやつからバスに乗れ」と言い、周囲はバタバタと準備をし始めた。


くるみは集合場所に移動しながらインベトリをチェックし、ポーションの数を確認していると、知らない男の子が「ペア組まない?」と声をかけてきた。


「…誰?」


「悠馬。 田所悠馬。 マジックナイト志望なんだ。 君たちとは一つ上の学年」


「あっそ」


くるみはそれだけ言うと、ポケットに手を入れ、返事をしないままで歩き始め、悠馬はくるみの後を追いかけていた。


くるみはバス乗り場に向かう途中で、葵が女の子と楽しそうに話している姿を見かけた。


葵は「ちょっと待ってね」と言うと、くるみの元に駆け寄り「今日のペアダンジョン、あの子と組んでもいいかな?」と聞いてきた。


ちらっと女の子を見ると、その子は銀色の鞘に入った剣を、腰にぶら下げていた。


「ナイト?」


「マジックナイトなんだって。 回復お願いできるかなって言われて…」


「好きにすればぁ~」


くるみは気のない返事をした後、さっさと歩き始める。


葵は「次は一緒に行こうね!!」とくるみに大声で言った後、女の子の元へ向かっていた。



「ペア、組んでくれるんだよね?」


悠馬が何度聞いても、くるみは一切振り返らず、足を止めようともしなかった。




「亮介、ペア組もうよ~」


「あ~ずるい!! アイカ、いつも同じチームにいるじゃん! たまには譲ってよ!!」


「亮介は俺と組むよな!!」


亮介は人だかりの中心で、ため息をついていた。


「俺は高難易度行きたいから…」と、亮介が言っても、周囲は全く聞いておらず、ギャーギャー騒ぐばかり。


『なんなんだよこいつら…』


亮介はそう思いながら再度ため息をつくと、くるみが目の前を横切る。


それと同時に、その後ろで必死になって話しかけている悠馬の姿を見つけ、『先越された!?』と、少し焦っていた。


「だから!俺は高難易度に行きたいんだよ!!」


亮介が叫ぶように言うと、周囲に居た人だかりは、その数を増やし「連れてって!!」と騒ぎ始めていた。




『うっせー男だな…』


くるみはポケットに手を入れたまま、バス乗り場へ向かっていると、急に手首を掴まれ「さっきから聞いてるんだけど!!」と、怒ったような表情で、悠馬に言われてしまう。


「何?」


「だからペア組んでって言ってるじゃん」


「嫌だ。 ソロで突っ込む」


「そんな無茶だよ! 大体、二人いないとゲート開かないじゃん」


「え? そうなの?」


「昨日先生が言ってたろ? 二人いないと無理だって」


悠馬がそう言うと、人だかりから歓喜とも取れる叫び声が聞こえ、くるみはかなりイラっとする。


くるみはイラっとしたまま「んじゃサボる」と言うと、悠馬の手を振り払い、さっさと行ってしまった。

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