第63話 case63

その後、くるみと亮介、ギルドルームに入ってきた太一の3人は、雑談を開始した。


すると、怒った様子のノリとセイジがギルドルームに入るなり、「行くぞ」と声をかける。


くるみが「どうしたの?」と聞くと、ノリが怒りながら話し始めた。


「さっきまでギルマス会議があったんだけど、A級ギルドの奴らにバカにされまくってさぁ。 『B級の奴らが調子に乗って荒稼ぎしてる』とか『A級の足元にも及ばないくせに』とか言ってきて超ムカつく!! 審査が来月だから、来月審査が通ればA級にも行けるようになるんだけど、ホンッとあったまくる!!! ムカついたから今からダンジョン行って、A級以上の実力見せてやろうって話になったのよ!!」


「審査って何?」と聞くと、セイジは怒りながら「行けばわかる。さっさとしろ!!」と怒鳴り、くるみはできたばかりの装備をインベトリに入れ、みんなと一緒にギルドルームを後にした。


セイジは無言で検索機を操作していると、男3人がゲラゲラと笑いながら近づいてくる。


「なんだぁセイジ。 ガキが2人も居るじゃねぇかよ。 しかもたったの5人とか!! これでA級審査が通ると思ってるのかよ!! 笑かせてくれるぜ!!」


くるみはイラっとしつつも黙っていると、盾を装備した男が「お嬢ちゃ~ん、高校生? 制服可愛いねぇ。 こんな奴と一緒に居ないで、お兄さんと遊んだほうが楽しいよ? なんならうちのメイドにしてあげようかぁ? 稼がせてあげちゃうよ~」と、いやらしい笑いを浮かべながら言い、くるみの肩を抱こうとする。


すると、亮介が男の手首を掴み、思い切り力を籠める。


「触らないでもらえます? うちのヒーラーなんで」と睨みながら言うと、男は泣きそうな表情をしながら痛がっていた。


セイジはダンジョンを決めるなり、くるみに向かって「後で返せ」と言い、チョーカーとリング、ピアスを手渡してきた。


セイジはそれ以上何も言わず、ゲートの中へ行き、みんなもその中に入る。


洞窟の中を歩いていると、魔獣の群れが牙をむき、こちらに向かって威嚇し始めた。


するとセイジが「姫、ヒーラーの実力見せてやれ」と言い、くるみは「イエッサー、マスター」と言いながら前に出る。


くるみはおもむろに、片膝をついて座ると、男3人が「土下座でもすんのかぁ」と、ゲラゲラ笑い始めた。


くるみはセイジから預かったアクセと、出来たばかりのアックスを装備すると、男3人は小声で話し始めた。


「え? あれ、幻獣装備じゃね?」


「マジで? キマイラかグリフィン殺ったって事か?」


くるみは何も気にせず、アックスを肩に担ぐと、ノリが「支えてあげる」と言い、立てた片膝を、くるみの背中に当てながらしゃがみ込んだ。


くるみは振り返り、無邪気な笑顔で「あんがと」と言うと、2人はうふふと笑い、ノリがアックスの柄とくるみの体を支える。


くるみは手に魔力を込め、セイジの「行け」と言う小さな声と同時に、大砲のように回復弾を放った瞬間、ノリとくるみの体は、反動で5メートル以上も後ろに下がった。


今までとは比べ物にならないほど大きな回復弾は、地面を抉り、洞窟内の構造を変えながら勢いよく突き進み、魔獣たちを消し去った後、爆音と爆風を起こした。


セイジはニコッと笑いながら「ご苦労」と言い、マナポーションをくるみに手渡すと、男3人はガタガタと震え始めた。


すると金色の蝶が舞い踊り、男3人は逃げるようにゲートの中へ。


3人が去った後、セイジは「よくやった」と、満足そうに言いながら、初めてくるみの頭に手を乗せていた。

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