第59話 case59

3人がギルドルームを出て行ったことに気が付いた2人は、慌ててギルドルームを飛び出し、間一髪の状態でダンジョンに入ることが出来た。


ダンジョンに入った後も、2人は張り合うように戦っていたため、3人の出る幕がない状態。


ノリが「なんか2人、おかしくない?」と聞くと、くるみが「頭でも打ったんじゃない?」と答える。


「太一はあれだけど、亮介、頭打つようなことしたの?」とノリが聞くと、くるみは訓練ダンジョンの事を思い出し、耳まで真っ赤にしていた。


「やっだ~ん。 なんかあったのぉ~? 真っ赤になって超きゃわわ~ん」


ノリが茶化すように言うと、くるみは「何でもないの!!」と力いっぱい怒鳴りつけ、亮介と太一の周りにいた魔獣たちを一瞬にして凍らせる。


太一と亮介はそれを見て、血の気が引いていくのを感じ、セイジは呆然としながら、くるみに聞く。


「…お前、また魔力が強くなったか?」


「そうかな? わかんない」


俯いたままのくるみに身の危険を感じ、セイジは「そ、そうか… 先に進むとしよう…」とだけ言い、先に進んでいた。


しばらく歩いていると、大きな湖に到着した5人は、少し休憩することに。


ノリはとげの付いた蔦を使い、木の棒に結わきつけた後、元の姿に戻った魔獣の肉を蔦の先端に結わきつける。


それを湖の中に放り投げた後、水際にあった木の根っこに座り込んだ。


くるみはその隣に座り、足で水をピチャピチャと蹴りながら「なにしてるの?」と聞いた。


「釣りって言うんだって。 この前本で読んだらやってみたくなっちゃってさぁ。 これで魚ってやつが釣れるんだって。 古代人はこうして日常的に魚を釣って、食べてたらしいよ?」


「ほっほ~。 食料になるんだ」


「そそ。こらこら、そんなにピチャピチャさせてたら魚が逃げるって」


2人はひと時の休息を楽しむように、笑いながら話していた。



太一とセイジ、亮介の3人は、二人とは遠く離れた場所で、心地よい風に吹かれ、横になっていた。



すると次の瞬間、ノリの竿がグググっと引き、ノリは「来た来た~~」と言いながら立ち上がった。


ノリは「おりゃああああ」と言いながら竿を引いた瞬間、くるみの体が水の中へ引きずり込まれる。



「姫~~!!!」


ノリの叫び声が聞こえ、3人がノリの方を見ると、ノリは水面に向かってくるみの名前を叫び、水面が大きく波打っていた。


「まさか!!」


セイジが叫ぶと同時に、亮介は水の中に飛び込み、水中でくるみの姿を探していた。



『何このデカいの… これが魚ってやつ?』


くるみはそう思いながら、魔獣の顔を足で蹴ったり、両手で口をこじ開けようとしてみたが、全くと言って良いほど魔獣の口は動かず、そのまま水中に引きずり込まれるばかり。


足から風の魔法を放っても、ブクブクと泡を作るだけで離す気配がないし、氷を放っても、氷は魔獣に当たった後、水面に向かって浮かび上がってしまい、魔獣に当たることはなく、炎の魔法を放っても、炎はすぐに消えてしまうばかり。


『一か八か…』


くるみはそう思い、土の魔法をいくつも放つと、岩の一部が魚の目に刺さり、やっと足が魚から解放された。


が、浮かび上がる魔力もなく、酸素も無くなっている状態。


ゆっくりと沈んでいく体に、成す術がなく、くるみはゆっくりと目を瞑った。

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