第58話 case58

くるみが授業中に雄たけびを上げている頃、亮介は救命措置についての授業を受けていた。


「人の体と言うのは空気を必要としている。 風は空気に流れによって出来上がり………」


教壇に立つ男性教師が言うと、亮介は眉間に皺を寄せた。


『なんなんだよあいつ… 押して押して押し倒そうとしたら、風で吹き飛ばされたぞ? あり得ねぇだろ… あいつ本当にウォーリアかよ…』


ノリが言っていた言葉と、くるみの行動が頭の中を駆け巡り、亮介はふとあることに気が付いた。


『まてよ? ノリさんはウォーリアで、くるみはマジックウォーリアーだろ? そもそもの攻略法が違うんじゃないのか? ノリさんが言ってたのは、ウォーリアの攻略法であって、マジックウォーリアには通用しないんじゃねぇの? だとしたら、俺、詰んだ?』


亮介は根本的な間違いに気づかず、血の気が引いていく感じに襲われていた。



その日の放課後。


くるみと亮介は距離を置いてギルドルームへ。


くるみがギルドルームに入るなり、太一は「姫ちゃ~ん!学校お疲れ様!! あ、ジュース飲む? 学校疲れたでしょ! 少し食べてからダンジョン行こっか!」とマシンガンのように話しかけてくる。


くるみがキョトーンとしたまま立ちすくんでいると、ドアが開き、亮介が中に入ってきた。


が、太一は亮介に見向きもせず、「ほらほら! 姫ちゃん座って!!」と言い、半ば強引にノリとセイジを退かし、くるみをソファに座らせた後「キマイラ一人でやったんだってね! すごいなぁ!! ホント憧れちゃうよ!!」と、流暢にしゃべるばかり。


「たいっちゃん、なんか変なもの食った?」とくるみが聞くと、太一はにっこりと笑顔で「んな訳ないじゃん! 俺はいつもと一緒よ? あ、マナポーション、いっぱい作っておいたから使ってね!」と言い、大量のマナポーションを手渡してきた。


「あ、そうそう! それとね、りつ子さんに言いたんだけど、幻獣には特種って言うのがいるらしいよ? 普通の幻獣よりも能力がはるかに高いし、魔法石も大量に持ってるんだって! S級の人たちはそれと戦ってるらしいよ! 強くなったら一緒に行こうね! あ、肩凝ってない? いつもアックス持ってるから肩凝るでしょ? 俺、マッサージ得意だからやってあげるよ!」


太一はそう言うと、自然すぎるくらい自然にくるみの肩を揉み始める。


亮介はそれを見ながら『なんだこれ? こんなに自然にくるみに触れてるだと? しかもくるみも嫌がってない。 なんで?』と、疑問に思っていた。


太一はくるみの肩を揉んだ後、「ずっと歩いてるし、ジェットスタート切るから足も疲れるでしょ?」と言い、スカートを履いている足に手を伸ばそうとする。


が、亮介が太一の手首を掴みながら睨みつけた。


「…そこは触らせねぇよ」


「何? お前も同志か?」


太一と亮介はライバル心をむき出しにし、バチバチと火花が飛びそうなほど睨み合う。


ノリとセイジ、くるみの3人は無言で立ち上がり、ノリは「ほっとこほっとこ」と言いながら3人でギルドルームを後にしていた。


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