第57話 case57
くるみは亮介に唇を奪われたまま、しばらく動けずにいた。
『ちょっと待った! これどう言う状況よ!! 何でこうなってる!? 何してんの?このバカ王子!!』
完全にパニックになるくるみとは反対に、亮介はくるみに対する愛おしさを抑えきれず、口全体でくるみに対する愛おしさを表し始める。
『このまま押し倒したい… このまま… このまま最後まで…』
亮介がそう思った時、くるみの両手が優しくそっと亮介の胸に触れた。
『止めないで良いって事だよな…』
亮介がそう思った瞬間、亮介の体は勢いよく吹き飛ばされ、亮介の体が壁にめり込んだ。
「な、なにすんのよ!!!」
くるみは真っ赤な顔を、手の甲で隠しながら怒鳴りつけると、亮介の体は力なく床に叩きつけられた。
葵は慌てて亮介を回復し、亮介は間一髪で一命を取り留め、ゆっくりと起き上がった。
「痛ぇなぁ!! 三途の川見えたぞコラ!!」
「うっさい!! 女と女の真剣勝負で何すんのよ!!」
「俺は男だバカ野郎!!」
「バカ野郎とは何だ! このドスケベタコ野郎!!」
「テメ… 誰に向かってドスケベタコ野郎っつってんだ! この大バカ野郎!!」
亮介が怒鳴りつけると、くるみは無言で亮介を指さす。
「んのやろ… あったま来た!」
亮介は勢いよく踏み切り、くるみに近づいたが、くるみは「ひいいいい」と言いながら風で亮介を吹き飛ばし、亮介の体は爆音と共に壁の中へ押し込まれ、力なく落下するばかり。
亮介は倒れるたびに葵に回復してもらい、回復してもらってはくるみに飛びかかり、くるみは亮介が飛びかかってくる度に風で吹き飛ばし、何度も亮介の体を壁の中に埋めていた。
何度か同じ行動を繰り返していると、葵が「二人ともやめてよ!! 僕の魔力が無くなっちゃう!!」と叫ぶ。
葵の叫び声を聞くと、亮介はピタッと足を止め、くるみは片膝をついてマナポーションを飲み始めた。
「くるみ!」
亮介が怒鳴りつけると、くるみは顔を上げ、投げつけられた何かをパシッと受け止める。
手の中を見ると、炎像の煉瓦が手の中にあった。
「え?」
「俺だけもらったら悪いから!」
亮介はそう言うと、苛立ったように階段を上ってしまい、葵もその後を追いかけていた。
「な… なんなの? あのバカ王子…」
くるみは呆然としながら煉瓦を眺め、インベトリにしっかりとしまっていた。
『ふざけやがって… 普通あそこで風の魔法使うか? 10回は死にかけたぞ?』
亮介は苛立ちながらダンジョンの外に出ると、アイカとミナが話しかけてきた。
が、亮介は「めっちゃ機嫌悪いから話しかけないでくれる?」と言い、不機嫌そうに教室に向かって行き、葵はその後を追いかけた。
その少し後、くるみがダンジョンから出てくると、アイカはくるみを睨みつけ、フンっと顔を背けると、そのまま教室へ向かい、ミナもその後を追いかける。
『なんだありゃ?』
くるみはそう思いながら教室へ向かい、椅子に座ると同時にさっきの事を思い出し、机に突っ伏した。
ヒーラーの授業が始まっても、くるみは机に突っ伏したまま。
ヒーラー専攻の女性教師は『あんな回復弾見せられたら、何も教えることはないわよねぇ』と思いながら、授業を進めていた。
すると突然「うがあああああああああああ」とくるみが叫び始め、教室に居た人全員が、ビクッと体が飛び跳ねる。
「ひ、姫野さん? どうかした?」
教師がそう聞いても、くるみは突っ伏したままで動かなかった。
『王子とキス? しかもあんな… マジで何考えてんだよあのバカ王子… どんな顔していいかわかんないじゃん… どうしたらいいんだろ… あ、無かったことにすればいいんだ! あれは夢だ! よし! そうしよう!!』
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