第24話 case24

亮介のチームに入れてもらったくるみは、軽くスキップしながらどんどん下へ進み、戦いながら奥の方まで行く。


すると、大きな広間に出てきた。


「ここがボス部屋ってやつかな?」


亮介がそう言うと、壁の隙間から出てきた、どろどろとした液体が、広間の中央に集まり、大きなスライムに姿を変えた。


亮介はくるみと気の弱そうな男の子に「下がって!」と言い、刀を装備した男の子と、ワンドを装備した男の子と一緒に、大きなスライムの前で武器を構える。


気の弱そうな男の子はガタガタと震え、その場から動けないでいた。


『しゃーねーなぁ』


くるみはゆっくりと歩き、震える男の子を通路に投げ捨てた。


すると、刀を装備した男の子が振り返り、「くーちゃん!見ててね!」と叫ぶ。


『だれがクーちゃんじゃボケ』


くるみはそう思いながら、引きつった笑顔を浮かべ、手を振っていた。


3人は必死に戦っていたけど、くるみの目には亮介しか映らなかった。


『いや~ん。マジかっこいいんですけど!しかも両刃アックス。 やっぱ時代は両刃よねぇ』


くるみはそう思いながら、亮介の動きを目で追う。


すると「ぐはぁ!」と言う声が聞こえ、さっき『クーちゃん』と呼んでいた男の子が、左腕から血を流していた。


『めんどくせ』


くるみはそう思いながら、指で回復魔法を放つ。


すると負傷していた男の子の傷は塞がり、男の子は「くーちゃん!ありがと~!」と言いながら手を振っていた。


『やかましいんじゃボケ。 そんくらい一瞬で殺れやタコ。 んなもんバーンってやってドーンってすれば終わるだろが』


くるみはそう思いながら、作り笑いで手を振り返す。


しばらく戦闘を眺めていると、くるみは立っていることに疲れ、その場に腰かけた。


すると、気の弱そうな男の子が「あの… お強いんですね」と声をかけてきた。


くるみが「いえ…」と言うと、男の子が「あ、僕、葵って言います。 佐倉葵です。 さっきも廊下で回復投げてくれましたよね。 ありがとうございます」と何度もお礼を言ってきたが、それ以上会話が続かず。


しばらくの沈黙の後、亮介は「ふーっ」と息を吐き、アックスを担いでくるみに近づき、隣に座り込んだ。


「暇そうだな」


「いえ…」


「ヒーラーのジョブチェン、成功した?」


「ま、まぁ…」


「そうなんだ。俺は全然。 ウォリ賢者に一撃も与えらんねーでやんの。 何が悪いんだろうな…」


「おっさ… お師匠様が仰ってたんですけど、ウォーリア賢者様はスピードが無いから、体制を低くすれば、脇腹を狙いやすいって…」


「え? そうなの? 脇腹かぁ… 今度狙ってみる。 サンキュ」


亮介はスッと立ち上がり、アックスを担いでスライムの方へ。


くるみは『もうちょっとだよ。がんばれ』と思いながら、指で回復魔法を放つ。


すると、回復した亮介は振り返り、合図を送るように片手でアックスを持ち上げた。


『やっだ~ん。マジかっこいいんですけど~。あ、鼻血出た』


くるみは鼻を押さえながら、回復魔法を自分にかける。


すると、亮介の一撃で大きなスライムはドドドドと言う音を立て、液体に変わった後、すぐに蒸発し、大きな魔法石に姿を変えた。


両腕を上げて喜ぶ3人と、拍手をしながら眺めているくるみと葵。


『金蝶来ない? 練習用だと来ないのかな?』


くるみはそう思いながら、先に通路を歩いている、亮介たちの後を歩いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る