第23話 case23

チャイムが鳴ると同時に、同じ学年の生徒たちが広間に集まる。


教師の説明を一通り聞いた後、くるみは練習用ヒーラー装備を身にまとった。


『マジックウォーリアって、ヒーラーも含まれるから装備できるんだ。なんて便利なんざんしょ』


そう思いながら順番を待っていると、教師の一人が「姫野、お前一人か?」と聞いてきた。


「…はい」とくるみが小さく答えると、教師は少し考えた後、「ま、お前なら回復あるし、大丈夫だろ」と変に納得した様子で、くるみをダンジョンの中に入れた。


石煉瓦で囲まれたダンジョンの中では、小さな青い物体がプルプルと動いている。


『…スライムってやつ? 初めて見たな』


くるみはそう思いながら周囲を見ると、周囲は必死にスライムと戦っている。


すると、ペシっと何かがくるみの腕に当たり、ふと見るとアイカの鞭がすぐそこまで迫っていた。


『痛… ここ人多いなぁ… あっち行こ』


くるみはそう思いながら、一人でどんどん奥に向かい、階段を下りていく。


すると、すぐ近くにいた亮介が、階段を下りていく、くるみの姿を見つけていた。


『あいつ、一人であんなところまで… 下って確か敵が強くなるんだよな… ヒーラーなのに大丈夫か?』


そう思っていても、亮介はチームを組んでいる状態で、一人でくるみを追いかけるわけにはいかず、小さなスライムと戦っていた。



くるみは一人で階段を降り、奥に進んでいると、目の前に1匹のスライムが現れた。


くるみは見下ろすようにスライムをじっと見つめ、スライムは少しだけ後ずさりをする。


『可愛くもなければ気持ち悪くもない。 ゼリーみたいだなこいつ』


黙ったままスライムをじっと見ていると、スライムはくるみの足にペトっと引っ付き、口を開けるように大きく伸びた後、牙を出してきた。


くるみは練習用ステッキを手にし、スライムに突き刺す。


するとスライムは弾けるように飛び散り、小さな魔法石へと変わっていた。


くるみは小さな魔法石を拾いあげ、それを指でつまんで目の前に。


『しょっぼ! 小さすぎない? 昨日の猫の1/1000くらいじゃないの? ないわぁ…』


そう思いながらどんどん進んでいると、奥からまたスライムが。


くるみは手にしたステッキを持ったまま振りかぶり、槍投げをするような感じで、ステッキを思い切り投げた。


ステッキはスライムに突き刺さり、パーンと弾け飛ぶ。


『あ、ちょっと楽しい』


そう思いながら、魔法でステッキを引き寄せ、辺りに居るスライムに、ステッキを投げて遊んでいた。


「斬新な攻撃だな」と言う声に振り返ると、亮介と3人の男の子が、その場に立っていたが、その中には、さっきいじめられていたヒーラーの男の子もいた。


『やば!!王子来た!!!』


そう思いながらステッキを抱きしめていると、亮介は「ヒーラーってそうやって攻撃するの?」と聞いてきた。


「いえ… あの… 怖い…かな?」


「かな? かなって攻撃の仕方が?」


「いえ、あの… えっと… ぶよぶよが…」


「ああ、近づきたくないって事ね。 確かに気持ち悪いよな」


「あの…、まぁ… そんな感じ… です…」


「そうだ。俺らこれからもっと下に行くんだけど、もしよかったら一緒に行かない?」


「…良いんですか?」


「もちろん!5人になるけど、ヒーラー2人もいれば、多少無理しても平気じゃん!」


「是非!お供させてください!!」


「OK。じゃあ行こうか」


亮介はそういうと、どんどん奥へ進んでいった。


『やば!!!王子と同じチームとか、マジで鼻血出そうだわ!!』


くるみはそう思いながら、浮足立つ気持ちを抑えきれず、軽くスキップをしながら階段を下りて行った。

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