第19話 case19
くるみはみんなの元に戻った後、両刃のバトルアックスが気に入ったようで、あどけない笑顔で「これにする!」と言ってきた。
セイジはそんなくるみを見て「おい、今のは何だ?」と聞いてきた。
くるみはキョトーンとした表情のまま「エンチャント」と答え、3人で魔法石を拾いに行ってしまった。
セイジは「エンチャント…だと? エンチャントであんな威力が」とまで言い、言葉を止めた。
『回復魔法で魔獣を倒すくらいだ。 エンチャントだけであれだけの炎が上がるのもおかしくない。 風の魔法を使って、あのスピードを出せるのもおかしくはないか…』
楽しそうに魔法石と素材を拾う3人を眺めながら、セイジは『とんでもない奴を拾ったな…』と、俯きながらクスッと笑っていた。
魔法石を拾いながら「あれ?金蝶、こないね?」とノリが言うと、くるみが「そういやそうだね。さっきの大きいの違ってたのかな?」と答える。
魔法石を拾い終えた4人は、森の奥に向かうと、遠くの方から咆哮が聞こえてきた。
自然と緊張感が増し、4人は武器を構えながら歩き始め、森を抜けると、氷の海原が広がっていた。
「まさか、2重ダンジョン…」
セイジが小さく呟くと、地響きと共に何かが倒れるような音が聞こえ、大きな牙を生やしたマンモスのような魔獣が、こちらに向かって駆け出していた。
「避けろ!」
セイジの言葉に反応し、くるみとノリは左右にジャンプしたが、太一は避け遅れてしまい、盾で魔獣の突進をガードした。
が、太一の体は跳ね飛ばされ、高く飛び上がってしまった。
「まずい!!」
セイジが叫ぶと、太一の体は空中でピタッと止まり、勢いよく魔獣の方へ。
太一は空中で盾を水平にし、盾の先端で魔獣の目を突き刺した。
魔獣は大きく暴れ、太一の体は地面に叩きつけそうになったが、太一は体を回転させ、片膝をつきながら着地した。
「姫ちゃんサンキュ!」
「おうよ!」
くるみは大声で返事をした後、高く飛び上がり、魔獣の頭をめがけて一直線に落下した。
が、アックスの片刃が割れてしまい、魔獣の頭には辛うじてヒビを入れた状態。
「ノリちゃんごめん!壊した!!」
「気にすんな!」
『氷で滑って満足に動けん』
ノリはそう思いながら、アックスを握り締め、隙を窺っていると、セイジが「ばらけろ!!」と叫んだ。
4人は4方向から魔獣を囲み、くるみは魔獣めがけて炎の魔法を何度も打つ。
「姫ちゃんダメだ!効かない!」
太一がそう叫ぶと、くるみの放った炎は、魔獣の体をはじき、氷にぶつかる。
『そうか!!』
セイジもくるみと同じように、炎の魔法を小刻みに打っていると、魔獣は前足を上げて大きく息を吸い込み、鼻から勢いよく吹雪を出し、回転を始める。
太一は盾でガードできたが、ノリとセイジは走り回る。
「姫!」
ノリが叫ぶと、くるみは魔獣の背中に乗り、足元に向かって炎を打ち続けていた。
すると、足元の氷はバキッと言う音を立て、魔獣の体は噴水のような水しぶきを上げながら水の中へ。
セイジは魔獣の顔めがけて光の魔法を放ち、ノリとくるみは高くジャンプした後、魔獣の頭をめがけ、一直線に勢いよく落下する。
二人のアックスが魔獣の頭に刺さった瞬間、二人はその場を離れ、太一はアックスめがけて盾を振り下ろす。
すると、2本のアックスはズズズと言う音を立てながら頭にめり込み、魔獣の体は大きく膨らんだ後、爆音と共に弾け飛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます