第17話 case17

マジックナイト賢者との練習を終えた後、くるみは建物の外に出た。


すると同時に、階段に座り込んで苦しそうにしている、亮介の後ろ姿が視界に飛び込んだ。


くるみは黙ったまま回復魔法を放ち、亮介は後ろを振り返りながら立ち上がる。


「おかえり。いつもありがとな」


照れ臭そうに笑う亮介に、くるみは黙ったまま頷いた。


『マジヤバ!イケメン過ぎるんですけど!かっこよすぎるんですけど!マジ王子!!』


くるみはそう思いながら駅に向かって歩く。


すると亮介も、くるみの隣に並んで歩き始めた。


『あ、ギルド寄って装備作らなきゃ』


くるみはそう思い立ち、自宅とは反対の方へ向かおうとすると、亮介が「寄り道?」と聞いてきた。


「え… あ、はい…」


「そっか。気をつけてな」


亮介はそういうと、自宅方面に向かう電車に乗り込んだ。


くるみはにやけて崩れてしまいそうな表情を必死に保ち、ギルド集会所へと急いだ。




『さっきのくるみ… なんかいつもと違ってたな… ヒーラーになれたのかな? 俺はまだ、ウォーリアになれてないって言うのに… テストの時、あんだけ空飛んでたし、すぐになれてもおかしくないか… 早くウォーリアになって、くるみの事守れるといいな…』


亮介はそう思いながら電車に揺られていた。




その頃くるみは、ギルド集会所に到着し、りつ子に「ちゃーっす」とあいさつした後、ギルドルームへ向かっていた。


りつ子は「ちゃーっす?」と不思議に思いながら、くるみが向かった方を眺めていた。


ギルドルームのドアを開けると、ノリとセイジ、太一の3人が話している最中だった。


「ちゃーっす」と、くるみが声をかけると、ノリは「ちーっす」と答え、太一とセイジは不思議そうな顔をしていた。


「姫ちゃん? なんかあった?」と太一が聞くと、くるみは装備作成機を弄りながら「ジョブチェンした」と…。


ノリが立ち上がりながら「マジ!?」と聞き、くるみが「マジ」と答える。


セイジは眼鏡を上げながら「マジックウォーリア…」と言うと、くるみは「ピンポンピンポン!大正解!」と答えた。


「あ、ノリちゃん、バトルアックスって片刃と両刃、どっちがいいかな?」


「あたしは片刃が好きだけど、切り返しの時に反転させなきゃいけないから、慣れるまでは大変かもよ? 両刃は楽だけど、重いからあんま好きくない」


「そっかぁ… ハンマーもかっこいいなぁ…」


「ハンマー、マジ重いから疲れるよ? 脳天殴打した時に、脳みそぐちゃってなるのは快感だし、スタン入れられるから便利だけど」


「あー… 重いの嫌だなぁ… 大剣ってどうなんだろ?」


「角度を微調整しないと、空気抵抗が大きくなって機動力が無くなるね。ただ、盾にも使えるから便利っちゃぁ便利だけど」


「機動力無いの嫌だなぁ…」


くるみが機械を睨みながら真剣に考えていた。


すると、ノリが「一通り試してみたら?一番しっくりいったのを使ったらいいんじゃない?古いので良ければ貸してあげるよ?」とアドバイス。


くるみは「そうする!ノリちゃんありがと!大好き!」と言いながら、目を光らせていた。


セイジは二人の姿を見て『ノリが増えた…』と、二人にばれないようにため息をついていた。

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