第16話 case16

砂埃が落ち着くと同時に、視界に飛び込んだのは服に着いた砂を払っているくるみの姿。


くるみはヒーラー賢者に気が付くと、ゆっくりと歩み寄り「じいちゃん、大丈夫?」と声をかけた。


「じ… じいちゃん?」


「もうさ、ジジイなんだから無理しないほうが良いよ?」


「じ… ジジイ…」


さっきとは正反対の言葉使いに、ヒーラー賢者は呆然としていた。


するとくるみは、ウォーリア賢者を見つけ「手合わせしようぜ!」と声をかけた。


ウォーリア賢者はニヤッと笑い「面白い」と言った後、2つの燭台の先端をポキッと折り、鉄の棒にしてくるみに投げる。


くるみはそれをキャッチした後、鉄の棒を片手で持ったまま肩に担ぎ、重心を低くするように足を開いて構えた。


ウォーリア賢者が鉄の棒を構え「来い!」と言った瞬間、くるみの姿は消え、ウォーリア賢者の後ろに片膝をついていた。


「おっさん遅いよ?」


くるみはそう言いながら、鉄の棒を肩に担ぎ、姿勢を正すと、ウォーリア賢者は片膝をついて腹部を押さえる。


「風の魔法?」とウィザード賢者が小さく呟くと、くるみはにっこりと笑った。


「そそ。強い追い風を起こせば、スピードが何倍にもなるっしょ!あたしってマジ天才~」


さっきとは正反対の性格と言葉使いに、ヒーラー賢者は「失敗じゃ…」と小さく呟く。


「いえ、成功ですよ。今さっきジョブチェンジしたばかりなのに、風を使いこなすなんて…」


「いや、失敗じゃ。あれじゃノリコと一緒じゃ。魔法が使える分、質が悪い」


ヒーラー賢者の言葉に、ウィザード賢者はノリの事を思い出し、言葉を飲んだ。



それを聞いていたマジックナイト賢者は、小さく笑った後、くるみに近づき、「ついてきて。面白い物見せてあげるよ」と言い、階段を上り始めた。


くるみは「あ、ちょい待って」と言った後、ウォーリア賢者に回復魔法を放つ。


すると、ウォーリア賢者の痛みは引き、すぐに立ち上がった。


くるみは「おっさん、また遊ぼうぜ」と言った後、マジックナイト賢者の後を追う。


ウォーリア賢者は「がははは」と豪快に笑い「大成功だな!」と満足げに扉の向こうに向かっていた。



マジックナイトの間に着くと、くるみはマジックナイト賢者に銀色の剣を手渡された。


マジックナイト賢者は「よく見てて」と言った後、剣を掲げると、剣は勢いよく炎を上げる。


くるみはそれを見て「おおお」と声を上げた。


「これはエンチャントって言って、武器に魔法をかけて属性をプラスするんだ。 物理攻撃と魔法攻撃を同時に与えることが出来る、マジックナイトの基本技。 無属性の武器でも、こうすれば好きな属性を付与できるんだ。 効果は大体10分くらいかな? 10分後にまたエンチャントすれば、効果はずっと続くよ」


「ほおおおおお! すっげー!!! 兄ちゃん若いのに賢者だし、イケメンだしで欠点無いの?」


マジックナイト賢者はこの言葉を聞き『ノリコ…』と思いながら、笑顔をひきつらせていた。


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