第14話 case14

来る日も来る日も、くるみはギルドメンバーとダンジョンに行き、高難易度ダンジョンにも行けるように。


4人の装備は豪華になり、ギルドルームには装備作成機が2つと、新しくアイテム作成機が加わっていた。


ボロボロだった木の長テーブルも新しくなり、座り心地の悪かったベンチも、ふかふかのソファに変わっていた。


が、相変わらずくるみが回復しようとすると、3人は必死の抵抗を見せていた。



ある日の事。


最前線で魔獣の攻撃を受けていた太一が、足元にある池に気を取られた瞬間、魔獣の群れが太一に襲い掛かった。


ノリとセイジ、炎の魔法を使っていたくるみの3人で、魔獣を撃破したのは良い物の、太一は血だらけの状態で蹲っていた。


くるみが「回復します!」と言うと、太一は恐る恐ると言った感じで、ゆっくりと立ち上がり、左腕を押さえながらくるみの前に立つ。


くるみが太一に向かって指をはじくと、緑の光ではなく、小さな火の玉が太一に向かって一直線に。


太一の左腕は炎を上げ、太一は慌てて近くにあった池に飛び込んだ。


太一は「ぷはっ」と言いながら池から顔を出した後、「殺す気か!!」とくるみに怒鳴り、くるみは泣きながら謝罪を繰り返していた。


この頃から、くるみは本気でジョブチェンジをしようか考えていた。



ある日の学校でのこと。


くるみが廊下を歩いていると、壁にもたれながら歩いている亮介の背中を見つけた。


くるみは急いで柱の陰に隠れ、不安に思いながらも亮介に向かって指をはじく。


亮介は一瞬立ち止まった後、周囲を見渡し、普通に歩き始めた。


くるみはホッとしながらも、心の中で『がんばれ』と言った後、その場を離れていた。



その日の放課後。


くるみは電車に乗り、手すりに摑まっていると、ぴったりと引っ付くように、隣に誰かが近寄ってきた。


ふと横を見ると、そこにはまっすぐ前を向いた亮介の横顔。


くるみは近すぎるくらい近い距離に、顔を真っ赤にして、俯いてしまった。


すると亮介は、くるみの耳元に顔を近付け「さっきサンキュな。歩けなくて困ってた」とだけ言い、姿勢を正す。


くるみは黙ったまま顔を横に振り、赤い顔がばれないように俯いていた。


しばらく電車に揺られていると、電車が急ブレーキをかけ、くるみの体が大きく揺れた。


亮介がくるみの体を片手で抱え、くるみは倒れずに済んだが、二人の顔は近すぎるくらい近すぎる。


二人の顔は徐々に赤みを増し、二人は姿勢を正した後、真っ赤な顔をしたままそっぽを向きあっていた。


くるみと亮介は、黙ったまま駅に着き、建物の中に入った後、別々の部屋に行ったが、くるみは部屋に入るなり、シスターに「マジックウォーリアって、どうしたらなれるんですか?」と聞いていた。


「通常ですと、ヒーラー、マジシャン、ウィザード、ウォーリア、そしてマジックナイトの5賢者の力を借りて、能力を引き出します。 けど、今までマジックウォーリアの覚醒は行われたことが無いので、成功するがどうかはわかりません」


この言葉を聞き、くるみは決心したように「お願いします!ジョブチェンジさせてください!」とはっきりと言い切っていた。


「急にどうしたんですか?」


「あの、今ギルドに居るんですけど… 魔力暴走して、みんななかなか回復させてくれないし、この前も回復しようとしたら、火の玉が出て炎上しちゃって…」


「・・・・」


「マジックウォーリアなら、魔力が半減されるから、安定するって聞いたので…」


シスターは黙ったまま、ヒーラー師匠の元にくるみを連れて行った。

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