第13話 case13

翌日、ノリコに誘われたくるみは、放課後にギルド集会所へ向かおうとしていた。


すると、それを見た亮介が「そっちじゃねぇぞ?」と声をかける。


くるみは少し困ったような表情をした後「…用事があるので、今日はおやすみします」と言い、駆け出してしまった。


亮介は「んだよあいつ…」と小さく呟いた後、『って事は、帰りの回復なし?マジか。俺、帰れるのか?』と、不安を抱きながら電車に乗っていた。



数時間後。


くるみはダンジョンの中を、ノリとセイジ、太一の4人で歩いていた。


セイジが足を止めると、太一が前に出て盾を構える。


すると茂みの中から、虎の魔獣が勢いよく飛び出してきた。


が、虎の魔獣は一瞬にして氷漬けになり、パーンと言う音と共に粉々に弾け飛んだ。


セイジと太一が振り返ると、そこにはステッキを抱えながら震えているくるみの姿。


ノリはそれを見て「…姫、あんたチート過ぎない?」と聞いていた。


その後も、くるみは泣きそうな顔をしながら悲鳴を上げ、襲い掛かってくる魔獣を氷の刃で串刺しにしたり、氷漬けにしては弾け飛ばしたりしていた。


その周囲で、氷の刃を避けながら、魔法石と素材を集めて歩く太一。


ノリとセイジは、芝の上に座り込み、二人を眺めていた。


「あの子、言ってることとやってることが違いすぎない?」


ノリがセイジに聞くと、セイジは無言を貫き、眼鏡をクイっとずり上げた。


すると、より一層大きな魔獣がくるみに襲い掛かり、くるみの叫び声も大きくなる。


「きゃああああ!!」


魔獣は氷漬けになり弾け飛んだが、大小様々な氷の破片は四方八方に。


氷の破片は、ノリとセイジの頬をかすめて赤い血が流れ、一部の大きな破片が太一の腕を貫通。


太一は腕を抱えながら蹲り、大量の出血のせいで、血だまりを作っていた。


「…あたしたち、戦ってないのに出血してるってどういうこと?」


ノリがそう言うと、セイジは黙ったまま、頬を流れた血を指で拭う。


くるみは慌てて太一に近づき「すいません!すぐ回復します!」と言ったが、太一は「いや!やめて!今はマジで死ぬ!!」と必死の抵抗を見せていた。


「大丈夫ですから!」


「だいじょばないから!!」


「本当に大丈夫ですから!!」


「絶対にだいじょばないから!!」


太一はそういうと、セイジの背後に隠れ、セイジは「待て!!やめろ!!」と、くるみを止めるように右手を伸ばし、珍しく大声を出す。


くるみは3人に向かい、3本の指をはじくと、小さな緑の光が3人の体にピタっとくっつき、見る見るうちに回復していた。


ノリは呆然としながら「今、鼻クソ飛ばした?」と聞くと、くるみは顔を真っ赤にし「飛ばしてません!!」と大声を出す。


太一は自分の腕を回転させ、あらゆる方向から見た後「俺死んでないよね?」と聞き、セイジは黙ったまま眼鏡を擦り上げた。


その後も、くるみは泣き叫びながら、次々に氷の魔法で魔獣を退治し、ノリとセイジはくるみから距離を置いて座る。


太一は恐る恐る魔法石と素材を拾っては、走って逃げていた。


しばらくの間、くるみ一人で戦闘(?)を繰り返していると、くるみの頭にふと爆発の呪文が閃いた。


全ての魔獣を退治した後、くるみは小さな山に向かって掌を掲げ、思いついた魔法を放つ。


すると小さな山は、中心部から爆音と爆風を上げ、一瞬にして更地になっていた。


「すご…」


ノリが小さく呟くと、金色の蝶がひらひらと舞い踊る。


太一が「素材…」と呟くと、金色のゲートが開いてしまい、3人は泣く泣く集会所へ帰っていった。

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