第11話 case11

適性が『マジックウォーリア』と言われた翌日。


くるみは授業を受けながら考え込んでいた。


男性教師が教科書を読み上げながら、教室中を動き回っている。


「ダンジョンと言うのは、魔獣が作り上げたものであって、その魔獣の強さによって、ダンジョンの難易度は変わってくる。

強い魔獣が作り出したダンジョンは、高難易度で作り出した魔獣も強い。

反対に、弱い魔獣が作り出したダンジョンは、比較的安易に攻略できる。

このダンジョンを作りだした魔獣、つまりボスを倒さない限り、出口であるゲートは開かない。

出口になるゲートは、特殊な魔力で作られた、金色の蝶が開いてくれるんだが、非常にもろく短命だ。 誤って倒してしまうと、もう2度と出られないと思っていい。

ゲートが開いているのは10分だ。それ以降になると、ゲートが閉じて脱出することが不可能になる。

稀に、全く同じダンジョンを作り上げる魔獣もいるが、金色の蝶が現れる可能性は非常に低い。 ダンジョンに入ったら、間違えても金色の蝶に手を出すなよ。

それと、極稀に2重ダンジョンと言うものも存在するらしい。

1つのダンジョンを攻略した後、更に同じ場所にダンジョン、またはボスが発生することがあるそうだが、実態はわかっていない。現在は、錯乱したハンターの戯言として処理されているが、ま、これも覚えなくていいだろ」


『ダンジョンか… 昨日の熊は2メートルくらいだったし、そこまで強くないのかな? だとしたら、もっと強い魔獣もいるだろうし、マジックウォーリアになったほうが良いって事? でも、戦闘怖いしなぁ…』


くるみは授業なんて全く聞かず、そんな事を考えていた。


「……の …めの 姫野!!」


「は、はい!」


くるみは慌てて返事をすると、男性教師は目の前に立っていた。


「ボーっとしすぎだ。ちゃんと授業受けてないと死ぬぞ?」


「…すいません」


教室内からクスクスと笑い声が聞こえる中、くるみはため息をついていた。


『自分の事だから、自分で決めなきゃいけないんだけど… どうしたらいいんだろう…』


教師から怒られたばかりなのに、くるみはまた違うことを考えていた。



そして放課後。


いつものように亮介と教会のような建物に行き、くるみはヒーラーの師匠である老人男性に相談していた。


「ふむ… マジックウォーリアか…」


「はい… でも、戦闘が本当に怖いんです…」


「ダンジョンへは行ったのか?」


「行きました。 熊の魔獣を、回復魔法で倒しました」


「…攻撃回数は?」


「1発です。 あ、これをセイジさんから頂いて、それを使ったんですけど…」


くるみはそう言いながらインベトリから、もらった装備を出した。


くるみが出した装備を見て、ヒーラー師匠は目を見開き、シスターは口を押えた。


「え? これで? え? これで倒したの?」


「はい…」


「1撃で?」


「はい…」


「こんな弱いので? え? 嘘じゃろ?」


「…弱いんですか?」


「練習用の一つ上じゃよ? え? 本当に? しかも回復魔法で?」


「? そうですよ?」


ヒーラー師匠はくるみの肩を叩き「ジョブチェンジしなさい」と言いながら何度も頷く。


「そんな事言っても…」と言いながら、くるみは手を見ると、指先に砂が付いていた。


指先をピンとはじくと、小さな緑の光が一直線に人形に当たり、人形は回復していた。


それを見たヒーラー師匠は、くるみの肩をポンと叩き「ジョブチェンジしなさい」と引きつった笑顔で言ってきた。

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