第10話 case10

くるみはりつ子にお礼を言った後、ノリに案内され、2階にあるギルドルームへ。


ギルドルームに入ると、大きな長テーブルとベンチ、そして水晶のはめ込まれた、大きな機械が視界に飛び込んだ。


それと同時に、ノリがくるみに説明を始めた。


「ここがうちのギルドルーム。で、そこにあるのが、装備制作機。ブレスレットをしてる方の手をかざして、素材と魔法石を入れると、適応した装備を作ってくれる優れモノなの。ロビーにもあるんだけど、利用料が高いし、時間がかかるから、前の人が使い終わった後じゃないと使えないのよ。だからいつも争奪戦が繰り広げられてるの。それと、あそこがシャワールームで、そこがロッカーね。学校帰りに寄ったときは、そこに荷物を入れておくといいわよ。ギルド員しか入れないから、セキュリティはバッチリ。あ、試しに装備、作ってみよっか」


ノリに提案され、くるみは機械にはめ込んである水晶に手を乗せる。


すると、水晶の上部に設置してある液晶に、作成可能な装備の一覧が、画像付きで表示された。


「おお!これ凄いですね!」


くるみが歓喜の声を上げると、セイジが「待て」と二人を引き留めた。


「姫、お前ジョブチェンしろ。ヒーラーじゃ暴走しまくって危険すぎる。おそらくマジシャンか、ウィザードが適切だ」


セイジの言葉を聞き、姫は少し落ち込んでしまった。


「戦闘… 怖いです」とくるみが言うと、ノリが「今更?一発で熊やったのに?」と、傷口を抉るようなことを平然と言う。


すると太一が「ジョブチェンすると性格変わるって言うし、戦闘が怖いのも治るかもよ? りつ子さんに言って、診断してもらったらどうかな? 俺も学校ではヒーラーって言われてたけど、ここで調べたらタンク寄りのナイトだったし。どうだろ?自分を知ることは大事だよ」と笑顔で切り出した。


「自分を知る事… ですか…」


くるみが小さく呟くと、太一は「案ずるより産むが易し!ほら、行こ行こ」と言い、くるみの背中を押してりつ子の元へ。


りつ子に事情を話すと、りつ子は何かをねだるように掌を差し出してきた。


「魔法石。別名ゼニ。またはカネ。ギルド入会祝いで5000で良いわよ」


ギルドに入会したばかりだし、ついさっきが初ダンジョンだったくるみが、そんな大金持っているはずもなく、断ろうとしていると、ノリが中身の入った麻袋を差しだした。


「これで良いよね? 姫、これからがっつり稼がせてもらうからね!」


くるみは何度もノリにお礼を言い、りつ子の案内で奥の部屋へ。


奥に行くと、テーブルの上には黒い水晶が置かれていた。


「ここに手を乗せて」と言われ、くるみは言われるがまま黒水晶に手を乗せる。


するとりつ子は中を覗き込み、少し経った後に「え!?マジ!?うそでしょ!? …初めて見た」と驚きの声を上げていた。


「なになに?」と、ノリが身を乗り出して聞くと、りつ子は少し呆然としながら「マジックウォーリア…」と、小声で呟いた。

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