第8話 case8
白い光の靄の中に連れられ、しばらく歩いていると、そこには緑豊かな大草原が広がっていた。
くるみは思わず「わぁ…」と声を上げた後、小さな白い花に目を向け、しゃがみ込んでいた。
ノリはそれを見て「癒されるわぁ~」と満面の笑みを浮かべていた。
セイジが「行くぞ」と言うと、3人はセイジの後を追って歩き出す。
しばらく歩いていると、セイジは急に足を止め、「来る」と言った後、身構えた。
太一はくるみに向かって「そこから動かないでね」と言った後、大きな盾を構えて駆け出し、セイジの前に。
ノリは大きな
突如、茂みの中から、オオカミの魔獣の群れが飛び出し、太一は盾で魔獣を薙ぎ払う。
セイジは右手を茂みの中に向け、白い光を放った後、その後ろからノリが飛び上がり、茂みの中で大きなアックスを振り回していた。
次々に襲い掛かってくるオオカミの魔獣を、次々に薙ぎ払い、血しぶきを上げながら倒していく3人。
『すごい…』
くるみは3人の連携に見とれていると、ノリの「危ない!!」と言う叫び声が響き渡った。
くるみが後ろを振り向くと、オオカミの群れが飛びかかってきていた。
「きゃあ!」
くるみは叫びながら頭を抱えてしゃがみ込む。
が、痛みも、魔獣が襲い掛かる様子もなく、顔を上げると、3人は呆然としていた。
「え?」と言いながら振り返ると、魔獣の群れは、飛びかかったままの姿で、氷漬けの状態に。
「ひいい」
くるみは慌ててセイジの後ろに隠れた。
セイジの後ろから、氷漬けになっている魔獣を見ると、氷漬けの魔獣は勢いよくはじけ飛び、ノリの足元には魔法石と、魔獣の皮が転がっていた。
ノリはアイテムを拾うこともなく、呆然とくるみを眺め、ただただ風が通り抜ける音だけが聞こえていた。
しばらくの沈黙の後、くるみは「た、助けていただいてありがとうございます…」と言うと、セイジが「お前… 本当にヒーラーか?」と聞いてきた。
「は、はい…」
「回復はできるんだよな?」
「はい…」
「太一が怪我したから治してもらえるか?」
「…わかりました」
くるみはそう言うと、太一の前に立ち、右手の掌を太一に向け、大きく息を吐いた。
そして意識を集中させ、少し力を抜いて魔力を放とうとした瞬間、太一は「ちょ、待っ」と声を上げたが、止めることが出来ず。
くるみの掌から放たれた、緑色した光の塊は、太一の体もろとも、勢いよく地面を抉って木々をなぎ倒し、一本の道を作っていた。
「あ!いっけない!大丈夫ですか!!」
くるみはそう言いながら駆け出し、ノリとセイジは呆然としていた。
地面の抉れた道を通り、終着点では太一が倒れていた。
「ごめんなさい!死なないで!本当にごめんなさい!」
くるみは泣き叫びながら太一の体を叩き、太一は唸り声をあげながら起き上がった。
「生きてた!よかったぁ…」
くるみはホッとしながらそう言うと、ノリとセイジが駆け寄ってくる。
ノリが「太一、大丈夫?」と聞くと、太一はゆっくりと起き上がり「盾壊れた… 回復魔法なのに、さっきより傷が酷いってどういうこと?」と聞き返した。
くるみは平謝りすることしか出来ず、何度も謝罪していると、セイジはくるみが手に持っていたステッキを奪い取った。
「練習用? この装備であの魔力? ありえん…」
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