第7話 case7
くるみと亮介は、毎日のように同じ場所に行き、毎日のように同じ行動をしていた。
これだけ同じ行動をしていれば、『あの二人、怪しいんじゃない?』と言う声が聞こえてもいいはずなのに、全く正反対の性格をしているせいか、二人を怪しむ声は、一切聞こえて来なかった。
そんなある日の事。
シスターから『明日はメンテナンスで休館します』と聞かされていたくるみは、ギルド集会所の地図を眺めていた。
『ヒーラーとしては上限に達してるし、最前線に行っても大丈夫って、お師匠様が言ってたよね…』
そう思いながら、練習用装備を身にまとい、ギルド集会所に向かった。
木造作りの大きな建物の中に入ったまではいいけど、通路から奥に行くことが出来ず、柱の陰に隠れながら練習用ステッキを抱きしめ、中の様子を窺っていた。
くるみは『帰ろうかな…』と思っていると、いきなり背後から「わぁ!!」と言う声が聞こえ、くるみの体は飛び跳ねた。
くるみが振り返ると、赤く、露出度の高い鎧を身にまとった女性が、にっこり笑いかけてきた。
「お嬢ちゃん、どうしたの?」と聞かれても、くるみは答えることが出来ず、小さな体を更に小さくするだけ。
「あれ?もしかして新米ヒーラーさん?」
女性に言われ、くるみは大きな三角帽子で顔を隠しながら、小刻みに何度も頷いた。
「きゃわわ~~ 超きゃわうぃ~んですけど! まじ誘拐しちゃおっかなぁ」と女性が言うと、その横から「ノリ、何してんだよ?」と、切れ目で眼鏡をかけた男性が話しかけてきた。
「え?ナンパよナンパ! 超きゃわわな新米ヒーラーちゃん見っけた! ねね、この子、うちのギルドにスカウトしない? いいでしょ? ヒーラー居ないし!」
「…君、卒業したばかりか?」
男性は眼鏡を少し上げながらくるみに聞くと、くるみは黙ったまま顔を横に振る。
「んな細かいこと良くない? いいじゃんよぉ。 ね! セイジ! お願い!」
セイジはため息をつき、「一度だけだ」と言うと、通路の奥に向かってしまった。
「ささ、行こ!」と、ノリはくるみを引っ張って奥に行く。
セイジがジュークボックスのような、大きな機械を操作していると、背後から「ごめーん!遅くなった!」と言う声が聞こえ、銀色の鎧と、大きな盾を身に着けた男の子が駆け寄ってきた。
「太一!遅い!」とノリが言うと、太一は「あれ?この子は?」と聞く。
「ん?さっきナンパした新米ヒーラーちゃん。超きゃわわなのよん」
「でたでた。 ノリちゃんの超きゃわわ。 話してるだけでウォーリアってバレるよね」
「太一、魔獣もろとも殺るぞコラ」
ノリと太一が言い合っていると、セイジが「行くぞ」と声をかけた。
ゲートの中心が白くもやががったように光り、セイジと太一は当たり前のように中に入る。
ノリは「さ、行こ!」とくるみの手を握り、くるみは訳も分からないままに、光の中に消えて行った。
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