第6話 case6
来る日も来る日も、放課後は大きな建物の中に行き、二人は疲れ果てるまで訓練を繰り返していた。
くるみは訓練部屋に入ると、シスターに挨拶をした。
老人男性がシスターに合図をし、シスターが人形にナイフで傷をつけた後、傷ついた人形に向かい、シスターが掌を向ける。
すると、掌から緑色の光が放たれ、人形に着いた傷は見る見るうちに回復していた。
「くるみさん、こうですよ」とシスターが優しい笑顔で言うと、くるみは「はい!」と言った後、同じように掌を人形に向け、集中し始めた。
くるみの手には、緑色の光が溢れた後、勢いよく放たれた回復魔法は、爆音と共に人形に当たり、人形は跡形もなく消し去られていた。
シスターはそれを見て「即死です」と言いながら、笑顔をひきつらせ、老人は固まっていた。
「もう一回お願いします!」とくるみが言うと、シスターは新しい人形を準備し、ナイフで傷をつける。
シスターが離れた後、くるみは掌を人形に向けて集中した後、掌から放たれた緑の光は、爆音と共に勢いよく人形に当たり、人形は木っ端みじんになっていた。
すると、しびれを切らせたシスターが、くるみに怒鳴りつけた。
「即死です!回復魔法で止め刺してどうするんですか!」
「だって… コントロールできないんですもん!!」
「もっと力を抜いてください!」
くるみは泣きそうな表情をしながら掌を見つめていると、老人が「マジシャンになったらどうだ?」と切り出してきた。
「攻撃とか戦闘とか怖いし…」
「いや、あのだね… 君の回復魔法は、一線超えて攻撃魔法になっておるぞ… しかも即死級の…」
「もう一度お願いします!」
「あのだね… その人形もタダじゃないから…」
「お願いします!!」
くるみの気迫に押されたのか、老人はシスターに人形を準備するように命じ、シスターはため息をつきながら人形を準備する。
くるみは何度も何度も、回復魔法と言う名の攻撃魔法を繰り返していたせいか、訓練が終わった頃には、くるみの魔力は枯渇している状態。
魔力がほとんど0の状態で、亮介に回復をしていたせいか、亮介が止めを刺されることはなかった。
『今日も失敗ばっかりだった…』
くるみは帰宅した後、ため息をついていた。
くるみの両親は、魔力研究所で働いているため、家に帰ってくるのは2週間に一度程度。
身の回りのことは、お手伝いの安田さんがしてくれるけど、ほとんど家で一人の状態。
安田さんが作ってくれた食事を取り、軽くシャワーを浴びた後、ベッドに潜り込み、父親から就寝直前に飲むように言われている、カプセル剤を1錠だけ飲む。
それを飲むと、一気に睡魔が襲い掛かり、5秒とかからないうちに眠ってしまう。
くるみはそれを『一人でいる事が多いから、寂しくないように導眠剤を飲んでいる』と思い込んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます