第4話 case4

『今すぐここに行け』と言われ、くるみと亮介は距離を開け、地図の場所に向かっていた。


電車を乗り継ぎ、やっとの思いで地図の場所にたどり着くと、そこには大きな教会のような建物があった。


くるみは警戒してしまい、なかなか動くことが出来ずにいたが、亮介はまっすぐに建物の中へ。


くるみは置いて行かれてしまったことで、更に不安になってしまい、急いで亮介の後を追いかけた。


中に入ると同時に、待ち構えていたシスターに封筒を渡す。


すると、くるみは亮介とは別の部屋に案内されてしまった。


部屋の中には、学校の測定器とは比べ物にならないくらい、大きな水晶が置いてあり、くるみはその水晶の存在だけで圧倒されていた。


しばらくすると、立派な白髭を蓄え、封筒を持った老人男性が姿を現した。


男性は封筒の中を確認するなり、くるみに「ヒーラー志望?」と聞いてきた。


「はい… ヒーラーが良いです…」


「ふむ… ヒーラーになったところで、そなたは上限値になっておるぞ?」


「上限値?ですか?」


「それ以上修練しても覚えることはないぞ? もうすでにマスターしておる。 それよりも、マジシャンの方が良いんじゃないかね?」


「え… でも、マジシャンって戦闘で攻撃したりするんですよね… そんなの怖くてできないです…」


老人男性は「ふむ」と言った後、くるみを手招きした。


くるみを目の前に立たせると、老人はくるみのおでこに手を当て、「ふんっ」と力を込めた。


くるみの頭に、痛みのない衝撃が走ると同時に、いろいろな回復魔法や補助魔法が頭に浮かんでこびりついた。


「え?あ… あれ?」


くるみが少し混乱していると、老人は立派な髭を撫でながら「ふぉっふぉっふぉ」と笑う。


「これならいきなり最前線に行っても大丈夫じゃよ。ヒーラーはなり手が少ないから、重宝されるぞ。もし気が変わったら、いつでも来なさい」と言った後、一枚の地図と黒いブレスレットを手渡した。


「ギルド集会所の場所じゃ。そこからダンジョンに行けるぞ。そのブレスレットはアイテムボックスじゃ。試しに付けて、魔力を送ってみなさい」


くるみは老人から言われた通り、黒いブレスレットを付け、魔力をブレスレットに集中させると、目の前には薄い水色をした半透明のインベントリが表示され、その中には練習用三角帽子と練習用黒いローブ、練習用ステッキと書かれていた。


「頭の中で練習用ステッキと強く念じてみなさい」


くるみは言われるがまま、『練習用ステッキ』と強く念じると、ねじれた形をした木のステッキが、手の中に浮かび上がり、すっぽりと納まった。


「ひゃあ!」


くるみは驚いてステッキを落としてしまうと、カランカランと乾いた木の音が響き渡る。


「まだ授業でやってないのかね?」


「は… はい…」


老人は「ふぉっふぉっふぉ」と笑うと、「じゃあこれは特別じゃ」と言い、シスターを呼んだ。


「この子にヒーラー魔法の使い方を教えてあげなさい」


シスターは「はい」と言った後、くるみを連れて別室へ向かっていった。

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