地球代表

西暦202X年、日本のとある電波望遠鏡によって、未知の電波が検出された。

「なんだね、この規則的な電波は?」

「さあ、地上の放送局や人工衛星のものではありませんね。」

それは間違いなく自然のものでも、地球のものでもない電波であった。


『地球外生命体からの交信』

このニュースに世界中のマスコミは飛びつき、多くの地球人は熱狂した。

テレビでは毎晩UFOや宇宙人に関する映像が流れ、ワイドショーも作られた。

宇宙人が出てくる映画が再放送され、特に「ET」はDVDも飛ぶように売れた。

数か月後、世界中の学者が集まって何とか解読した交信内容が発表されると、熱狂はさらに高まった。

「人類を『銀河連合会議』に招待したい。近いうちに地球へ行く。良い返事を期待している。」

まさに驚天動地であった。

「銀河連合会議だって?そんなものが存在したのか!」

「連合ってことは銀河系に知的生命体はいくつも存在するのか!?」

「地球に来るって言ってるぞ!宇宙人ってのはどうやっておもてなしするんだ?」

今までの問題はもはや些細なことだった。宇宙人を出迎えるため、地球人は急いで準備を整えた。


宇宙人が到着すると、地球人の興奮はピークになった。

やってきた宇宙人は、地球人の熱狂を見て苦笑し、国連の議場で各国政府首脳を前にこう言った。

「連絡の通り、銀河連合会議に招待したいと思います。なので、会議に参加する地球人の代表者を

一人、決めていただきたいのです。決まるまで我々は衛星軌道上の宇宙船で待機しています。」

各国首脳の顔は凍り付いた。宇宙人はそれだけ伝えると、そそくさと軌道上の宇宙船に戻った。


宇宙人が帰ると、議場は静まりかえった。重々しい空気の中で、ロシア代表が口を開いた。

「我がロシアは初めて人類を宇宙に送った国であり、代表者を出すのに最もふさわしい。」

米国代表が口をはさむ。

「アメリカこそ多様な人種が共存していて、世界の縮図ではないか。これほどの適任はいない。」

中国代表がわめきたてる。

「多数決の原則でいえば、最も多い人口を持つ我が国こそが代表を出すべきだ。」

スイス代表が胸を張って言う。

「永世中立国たる我が国こそ、最も適切な選択である。」

エジプト、イラクはそれぞれ騒ぐ。

「人類文明の発祥の地である我が国が最もふさわしい。」

自国から地球人代表を出せばその利益は計り知れない。うまくいけば世界全体を意のままに操れる。

各国代表はそれぞれ自国が代表を出すのに適任であると声高に主張し始めた。

議場での口論がエスカレートし、さらに他の国際問題とも絡み合って

遂には紛争、そして大国間の戦争にまで発展した。


核ミサイルが飛び交い、次々に都市が焼けていく様を宇宙船から見て宇宙人たちは言った。

「代表も話し合いで決められないなんて、地球人はまだ未熟だな。」

「ああ、これでは銀河連合会議に呼んでも仕方あるまい。もう少し文明が成熟したらまた来よう。」

「とは言え、この戦争のあと地球人が生き残っているか甚だ疑問だがね。」

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