侵略

Aは大学の教授であった。

彼は「南米への侵略」について授業をしていた。

「えー、というわけで、南米にやってきた大昔のヨーロッパ人たちはあっという間に現地の文明を滅ぼしてしまったのだ。」

「どうして彼らはそんな酷いことをしたんです?A教授。」

「いい質問だね、B君。」

BはA教授のお気に入りの学生であった。Bに質問されたAは少しばかり嬉しそうに続ける。

「当時の南米には、西洋とは違った非常に優れた文明が数多くあった。

インカ帝国やアステカ文明が有名だね。ところが、遠くからやってきたヨーロッパ人は自分勝手な価値観から、それを『野蛮極まりない』ものと見なしたんだ。」

Bは信じられないかのような顔をして聞き返す。

「そんな主観的な理由で現地の文明を滅ぼしてしまったのですか?あまりに滅茶苦茶じゃありませんか。」

Aはまた笑って答える。

「その通り。当時のヨーロッパ人は自分勝手で乱暴だった。」

「しかし現在は多様化の社会だ。我々は互いの文化を尊重しあっている。当時のヨーロッパ人の子孫だとは到底信じられないくらいだ。たとえどんな者たちが相手だろうと我々は彼らと手を取り合ってうまくやっていける。人類も進化したということだろうね。」

そんな話をして授業は終わった。


Aは研究室に戻ると、新聞を読み始めた。

Bが部屋に入ってきて話しかける。

「今日の授業も面白かったです、A教授。」

「ああ、ありがとうB君。それより君、この記事を読んだかね?」

Bは興味深そうにのぞき込む。

「ええ、『人類が生活できる惑星を発見、早速調査隊を投入』ですか。やっと人類にも新天地が見つかったんですね。」

Aは頷いて言う。

「うん、そうだよ。ところが調査したところ、問題が発覚したらしくてね。」

「問題、とは何ですか?A教授。」

Aは微笑みながら続ける。

「なに、些細なことなんだ。異星人の原住民がいたらしいんだよ。異星人といっても大したものではなくて、文明のレベルも我々よりずっと劣ってるんだ。」

「その文明というのも、奇妙な儀式をする、我々とは比べ物にならないほど低俗なものなのだと。」

Bは笑いながら答える。

「そんな低俗で野蛮な奴らはさっさと滅ぼしてしまえばいいじゃありませんか!」

Aもまた笑いながら答える。

「その通りだとも!彼らにあの星はもったいないよ。未開の野蛮人は追い出して、優れた文明を持つ我々人類が適切に管理すべきだと思うものだね!」

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