第18話

~大介の話~

俺は、おとなしい子どもだった。



思っていることを伝えるのは昔から、苦手た。

例え相手が友達でも・・・


自分をさらけ出したり、とか、恥ずかしくて出来ない。

なぜだか分からないけど、小学生の時からあまり騒いだりしない子どもだった。


好きで大人しくしていた訳ではない。


自分をどう表現したら良いのかわからない。




そんな俺が唯一好きだったのが、音楽の時間。


合唱があるから。


皆で歌った「大地讃頌」

これが俺の原点だったと思う。



歌っている時、俺の中の何かが開放されていくのを感じた。

自由になったような気がした。


楽しい。


歌うのは、楽しい。




合唱の時間


俺は感情を込めて、一生懸命歌った。


誰よりも大きな声を出して、歌った。


誰かに届け。


俺の歌声は、みんなの声の中に混ざって、消えていった。

こんなに大きな声を出して歌っているのに。

こんなに上手に歌っているのに。



ああ、いつか、一人で、歌いたい。

俺だけの声を聴いてほしい。




俺だけを見て。




ある日、合唱の女の先生が、俺を見て言った。


「大介くんは音程が良く取れてるわね。みんなにお手本を見せてくれる?」

と。


それもそのはず、楽譜をもらってから、家で一人で練習をしていた。

音程はバッチリだ。


普段人前で何かをやるのは苦手だ。


だけど、歌うのだけは別。


そのとき、なぜか分からないけど、自信が湧いてきた。



俺の声を聴け。



体育座りをした、みんなの顔を見る。


皆の目が、俺に向かっている。




~♪


~♪

~♪


俺は堂々と歌った。

この空間は俺のもの。


パチパチパチ

皆が俺を見ていた。


中学になっても、俺の性格は変わらなかった。


大人しくて、目立たない。


学校生活を楽しいと思えなかった。


そんな現実から逃避するように、ネットの世界にハマっていった。


トゥイキャスで歌い手、というのがいるのを知った。


顔を出さずに、普通に喋ったり、歌ったりしている。


それだけで、視聴者を喜ばせている。



俺の歌を皆にきいてほしい。


出来るだけ、たくさんの人に。


俺は、唯一、歌うことだけは自信を持てた。


毎日、配信をしたり、youtubeに「歌ってみた」動画を載せたりするようになった。


始めは10人くらいだった視聴者がどんどん増えていくのが嬉しかった。




自分でも気づかなかったが、俺はどうやら「イケボ」らしい。


学校の外に、俺を見てくれる人がいる。

俺の居場所・・・



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