明日も
一方美人
第1話
「今日も死ぬ」
だって昨日も死んだ一昨日も死んだ
ので、今日も死ぬだろう
そんな冒頭にしようと思う
これは''彼''が生きる、そして殺す物語
目が覚めた、今日の夢はそれほど悪くなかった
「まだ13時か、」誰もいないのにそう言って起き
ゆっくり洗面所に行き顔を洗うと昨日とは違う顔が見えたが、驚くことではない、毎日そうなのだから
人は毎日違う顔を付けて街に出る
そんなことにさえ気づけていない極めて感性が低く知性に欠けている者達を嘲笑う
今日はそんな顔だ
昨日の夜は酷かった、死を欲し善を拒み希望を捨て
絶望に酔いしれるそんな夜
そんな日ほど悪くない夢を見る
トントン.....ゴン...ゴンゴン!!!
狭い部屋に鳴り響くドアを叩く音に耳を塞ぐ
「薫!!いるの!?」と叫ぶ女性
彼女はとても美人でいつもGUCCIのバッグなんか下げてる
僕の彼女で名前は美冬だ
僕は美冬が嫌いだ、なぜなら美冬は温度が違う
生きる世界の温度
だから嫌いだ
ガチャ....
「何」
「何じゃないよ!心配したんだから!ずっとどこにいたの?」
美冬は涙目でそう言った
「どこへも行ってないずっとこの狭くて汚い部屋に居た」
そう答えると美冬は黙り
僕は「用がないなら帰って、やることあるから」
そう言いドアを閉めると直後にメールの通知音が鳴る
美冬からだ
[もう別れましょう]
それだけ書いてあるメールを読み
[了解]
と返信。
まるで業務連絡かのように関係を失った。
悲しいなんてことは少しもなかった。
まるで何事もなかったかのように部屋に戻り
僕は部屋の壁に耳をすませる。
この団地は壁が薄くて隣の部屋のやりとりなどが
丸聞こえなのだ
「やめて!もう死にたいの!止めるなら貴方も殺すわ!!」
甲高い声の女性がそう言って暴れている。
週に何回か行われるこのやりとりを
僕は少ない楽しみの一つにしているのだ。
僕はその声に興奮し服を脱ぎ自慰行為に奔り
生命の源とされるその液体が出ることを確認して
そのまま全裸で風呂場に行き体を洗った。
(今日は家から出ることもないだろう)
そう思い水で体だけ流し風呂場から出て間もなく、
聞いたこともないグロテスクな音が耳を襲った。
僕は高まる鼓動を抑えきれず隣の部屋のドアまで行きドアを叩いた
ドアが開くとそこには倒れた男性と手が赤く
染まった綺麗な女性がいた。
いや、容姿はそこまで美しいとは言えない極一般的な容姿だったが僕には何より美しく見える。
女性は僕を見て笑い
そして僕は人生で初めて恋をした
女性は手招きをして僕を呼び込んだ
僕は土足のまま部屋に入り女性に近づき
そのまま抱きしめてキスをした
無抵抗な殺人鬼に興奮した僕は押し倒し
乳房を掴み性感帯を探った
そこからのことはあまり覚えていない
気がつけば夜の20時になっていた
死体に群がるハエのように女性を求めたのだろう
「さよなら」
その言葉を残して彼女は逃げるかのように消えて
いった
僕は死体の横で子供のように泣いた
側から見ればまるで男性の死を悲しみ泣いてるように見えたのだろうか
23時頃に僕は自分の部屋に戻った
光を失った目に光を取り込むかのようにケータイを見つめて時間が過ぎるのを待った
時刻は24時丁度
「今日が死んだ」
きっと明日も明後日も明々後日も死ぬのだろう
それまで生きていこう
そんな希望を持ってしまった
(今日は悪夢だろうな)
そう思い眠った
僕はまた今日を殺した。
明日も 一方美人 @yommii
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