第4話 親子丼
前回のクエストから数日後、バリーとエアリィの二人はギルドの宿泊施設裏で土を掘っていた。
「こんなに雑で良いのか?デカイ魔方陣とか書いて大袈裟にやるイメージあったんだが…。」
「必要ないよ、だって僕天才だし。」
「どこからその自信沸いてくるんだ…?分けて貰えるなら欲しいレベルだよ…。
よし、こんなモンか?」
掘った土を1m程度の山にしたらバリーはその場から軽く遠ざかった。
「よし、じゃあ行くよ!
そりゃ!」
エアリィが杖を振ると盛った土が光り、形を変えて人の姿を取り始めた。
「土塊に魔力を入れるだけで簡単に自由に動く人形の出来上がり…改めて魔法ってのは便利だね。」
バリーがぼやいていると土塊は80cmほどの小さな人形の生物…すなわちゴーレムとなった。
「よし、我ながら上出来。
バリー、コレで『条件』は間に合うよね?」
「ホントにソイツが『エネミーの持つ魔力を数値的に計れる』ならな。」
~~~~~~~~~~~~~~~
━数日前、マンドラゴラ戦のクエスト後
「条件?」
「俺はお前の面倒を見る上でお前にエネミー料理の客観的意見が欲しい。
つまりはお前に味見役を頼みたい。
でも、味は俺の味見とお前の素直な舌の意見で良いけど、お前の言うエネミー料理の持つ魔力が濃いと言うのが魔法が使えない俺には分からない。
お前の意見でも良いがソコは資料に纏めるにあたって『数値として視覚化』したい。
魔法の威力とかでそこら辺どうにかならない?」
「…あんまりエネミー料理の意見をしないとならないってのが嬉しくないんだけど。
でも、多分行ける…かも。」
~~~~~~~~~~~~~~~
「安心してよ!私のゴーレムだよ?」
「ゴーレムで魔力を数値化出来る理由が分からないんだけど…。」
発光しながら身体を変化させていたゴーレムの発光と変化が止まるとその体はエアリィよりも幼い少女の姿をしていた。
「女の子の姿にしろってオーダーはしてないぞ?」
「ちゃんと言われた通りの事は出来るからいいじゃん。
それに、私妹が欲しかったし。
おはよう!私のゴーレムちゃん!」
「おはよう造物主。
話を聞いた限り『おねーちゃん』と呼んだ方が良いですか?」
「じゃあ、そう呼んで。」と嬉しそうに返すエアリィとゴーレムを見てバリーは驚いていた。
「喋れるの?」
「うん、そう作ったから。」
「研究においてもコミュニケーションは大事でしょ?『おにーちゃん』。」
「…正論だけど生後1分の魔法生物に言われたくない。
あと、その呼び方はやめろ、やめてくれ。
…で?どうやってエネミーの魔力を測るんだ?」
「えーと…バリー、何か今食べられるエネミー料理持ってる?」
「え?あるにはあるけど…。」
バリーは片手で持てる程の大きさの樽を持ってきて中から乾燥して黒くなった何かを取り出した。
「なにそれ?」
「この前のマンドラゴラを塩に浸けて燻製して保存してたヤツ。
ゴーレムちゃんや、コレを食べてみてくれないか?」
「…私、ゴーレムですよ?
食事は必要とせず、私の体の土の養分になるだけですけど?」
「いいから…って土の養分なるの?お前の体で野菜育てていい?」
「おにーちゃん、最初から私の体目当てですか?」
「違う。
まぁ、とりあえず食べてくれ。」
ゴーレムは「はぁ…。」と若干呆れながらマンドラゴラを口に入れた。
「…少し塩分多いですね、コレじゃ私で野菜作れませんよ?
まぁ…作らせはしないですけど。
…!?」
ゴーレムがマンドラゴラの燻製を飲み込んだ直後、リンの体が再び発光しはじめた。
「おいおい…大丈夫か?コレ?」
「大丈夫大丈夫…多分。
まぁ、見ててよ。」
ゴーレムの体は変化し、体の大きさが変化前の二倍程度に伸びて見た目は幼い少女から成人女性へと変わった。
「…もしかして、コレが『数値で分かるエネミーの魔力量』?」
「そうだよ、身長80cmのゴーレムちゃんがどのくらい大きくなるかで測るの。
分かりやすくない?」
「まぁ…分かりにくくはないか…。」
バリーがメモリの付いた長い紐を取り出してゴーレムの身長を測ろうとすると、ゴーレムの掌底がバリーに炸裂、バリーは3メートルほど後ろに吹き飛んだ。
「いってぇ!」
「おにーちゃん、乙女の肌に勝手に触れるのは重罪ですよ?
やはり、おにーちゃんは私の体目当てですか?」
「ゴーレムはそもそも無性別だろうが…。
おい、エアリィいらん羞恥心つけるなよ。」
「えー?だって、可愛く作ったんだから身を守る為にも必要じゃない?
可愛い妹だよ?」
「可愛い妹じゃなくて魔力測定器のオーダーをしたんだけどな…。
仕方ない…。」
深くため息をついたバリーは腰の(空間魔符で内部を拡張した)ポーチから3メートルの細長い板を取り出し、壁に立て掛けた。
「コレを背に立ってくれ。
身長の所に印を付けるだけで終わるから。」
「まぁ、それならいいでしょう。」
ゴーレムが板の前に立ちバリーが印を付ける。
「130cm…プラス50cmか、他の料理も食べさせてみないと分からないけど、マンドラゴラの記録は取れたな。
食べさせる量は小さい子どもの一口量で計算して、やっていけそうだな。
因みに味はどうだった?」
「塩分が多い等は分かりますが、ゴーレムに味覚を期待しないで下さい。」
「そうか…そうだよな…
まぁ、味覚に関しては良いリアクションをしてくれるエルフが居るから良いか。」
メモをしながらバリーはニヤニヤとエアリィの方を見た。
「勝手にエネミー料理の味覚担当にされてるんだけど…。
そんなことより、『ゴーレムちゃん』だと可愛げもないし、何か名前つけようか?
いいよね?」
「どーぞご自由に。」
「おねーちゃんの好きなように。」
「うーん…じゃあ、何が良いだろう…?
ゴンザレス…ゴライアス…ゴロー…この中だとどれが良い?」
「「…。」」
エアリィの壊滅的なネーミングセンスを二人が黙殺してると後ろから声が聞こえてきた。
「『リン』ってのはどうだい?」
「あー…確かにかわいいかも…って、誰!?」
声の方へ三人が振り向くと高身長の白衣を着た若い男が立っていた。
「や、バリーくん久しぶり。」
「誰かと思ったら『ガウリュ』さんじゃないですか。
いつからウードリアに?」
「この国は魔法生物…今はエネミーって言うんだっけ?私にはどちらでも良いけど、それが多様に生息してるからそこそこ来るようにしてるんだよ。
おっと…今はそれよりそのゴーレムの命名じゃないかな?」
「あ…そうだった。
どうだ?エアリィ、このゴーレムの名前。」
「リンちゃんかぁ…でも、やっぱりゴンザレ…。」
「いやぁ、俺はリンが良いと思うぞ?
いかにも天才魔法使いの従者で妹って感じで最高だと思う。」
「リンとは土壌にも含まれている栄養素なので土から生まれて魔力と言う栄養素を測る私にはピッタリな名前ではないでしょうか?」
「ほら、本人も気に入ってるぞ?良いんじゃないか?」
ゴンサレスに命名されそうなのを阻止するため二人は必死にエアリィを説得した。
「うーん…ゴンザレスの方が良いとは思うけど…本人が言うんじゃ仕方ないか!よろしくね、リンちゃん!」
「分かりました、コレからよろしくお願いします。
おねーちゃん、おにーちゃん。謎の人。」
『リン』と名付けられたゴーレムは何故かピースしながらあいさつをした。
「…おにーちゃんはやめろ。
ゴーレムって表情ないクセに意外と感情豊かなんだな。」
「造り手の才能だね、あの娘は良い魔法使いになるよ。」
意外な顔をしているバリーに対してガウリュ(謎の人)と呼ばれた男が説明した。
~~~~~~~~~~~~~~~~
「紹介が遅れましたが、コイツは先日俺が森を調査してた時にエネミーに襲われていたエルフの少女のエアリィ、訳あって俺が面倒見てます。」
「こんにちは!バリーが街に居づらくて家出してた時に出会ってしまった結果誘拐されてゲテモノ食べされられてる天才美少女エルフです!」
「誘拐じゃないし、ゲテモノ言うな。」
「誘拐以外は事実じゃん。」
「…まぁ、いいや。
こちらはガウリュさん、この森の国からずっと西にある機械都市『ギアリス』にある学院の魔法生物の教授で俺の学生時代の恩師だよ。
今、エネミーで料理してるのもガウリュさんに魔法生物の研究勧められたからだし。」
「まぁ、魔法生物は今君達が作ったゴーレムとかの一部を除いて殆どが『魔王』が造ったエネミーだけどね。」
「え?なんで?」
エアリィはガウリュが語りだしたエネミーの定義について疑問を呈した。
その隣のリンもハテナマークが浮かぶかのように首を傾ける。
「魔法生物ってその殆どが生物として破綻してるんだ、例えば今食べていたマンドラゴラも筋肉がないのに立って歩いて、声帯がないのに叫ぶだろう?
コレは魔力で無理矢理動かされているからなんだ。
つまり魔力が無ければ生き物としての欠陥で自然と消えていく。
例えば角の生えたウサギであるアルミラージは角と言う本来のウサギならいらない部分のために骨がスカスカになってマトモに地面を走ることが出来なくなるだろうね。」
ガウリュが手持ちのスケッチブックに図を書きながらエアリィとリンに説明をし始めた。
「つまりエネミーとは私のようなゴーレム同様に魔力で動く体裁を得た生き物と言う訳ですね?
しかし、それが何故一部を除いて魔王のみに許されたモノなのですか?」
「それは一重に『魔王が魔王だから』…かな?
魔力で無理矢理動いている生き物だからメンテナンスが必要だったり、定期的に魔力を与えたりしないとならないんだけど、エネミーは勝手に環境に適応して既にそこに生息していた生き物を害するレベルで根付いてしまってるんだよ。
そこまで次元の違う魔法生物なんて今の機械都市やエルフの里でも作れる魔法使い居ないからね。」
「へぇ~。」
「そのエネミーを調査して、学院の教授をしつつその情報を『勇者』と呼ばれる打倒魔王を専門にする人に渡すのがガウリュさんの仕事だよ。」
「私は趣味で魔法生物調べてるだけだけどね…。」
~~~~~~~~~~~~~~~~
「そうだ、そのエネミー調査の件でバリーくんにハンターとして依頼を持ってきたんだった。」
そう言うとガウリュは手に下げたカバンから一枚の依頼書を取り出した。
「拝見します…えーと、コカトリスですか?
ニワトリと合わさった蛇のエネミー…美味しそ…じゃなくて結構危険なエネミーですね。」
「そう、だから護衛を兼ねて調査の手伝いをお願いしたいからバリーくんを指名で依頼したいんだ。
この国のギルドから許可は貰ってる、お願い出来るかい?」
「了解です、じゃあ準備してきます。
エアリィ、結構危険だけど行けるか?」
「モチロン!リンちゃんの肩慣らしにしてあげるよ。」
「やってやります。」
バリーの質問にエアリィだけでなくリンも肩を回して返事をした。
~~~~~~~~~~~~~~~
出発した一行が森の中を進み、数時間たちの前に小さな屋敷が見えてきた。
「この家の庭に居るって目撃情報がギルドに入ってたっぽいですね。」
「こんな森の中にポツンと建ってる屋敷…誰か住んでるの?」
「まぁ…間違いなく廃墟だろうな。取りあえず探してみるか。」
一行が屋敷の裏手に回るとそこには木の枝等で出来た数メートルの巨大な鳥の巣のような巨大な物体があった。
「…アレだな。
ちょっと待ってて下さい。」
そう言うとバリーは物陰で何かをゴソゴソと何かをしてから戻ってきた。
「よし…手っ取り早く炎で巣ごと攻撃したいんですけど、ガウリュさん良いです?」
「構わないよ、巣を作るのは元から知っていたから。
…コカトリスを炭にはしないでね。」
「よーし、じゃあ行くよー!」
ガウリュの許可が出るとエアリィは杖を回して火炎弾を飛ばした。
《コケーーーーー!》
巣が激しく炎上すると、中から蛇の尾を持った2m弱の巨大なニワトリが飛び出して、エアリィに向かって蹴りを繰り出した。
「おねーちゃん、下がって。」
すかさずエアリィの前にリンが立ち塞がり攻撃を防御した。
防御したその腕は一時的に巨大化している。
「すげーな…さしずめ可変型妹って所か。
なにより、俺とエアリィだと前衛が居なかったから助かる。」
そう呟きながらバリーが矢をつがえ、放った。
《コケッ!?》
その矢はコカトリスの首に命中したが、勢いは衰えず向きをバリーに変えて突進してきた。
「やだねぇ、頭に血が登って。」
《コケーーーーー!コケッ!?》
コカトリスがバリーに襲いかかる一歩前、巨大な網がコカトリスの足元から展開しその巨体を吊り上げた。
「罠も貼らずに攻撃のラグのある弓を使うハンターが無防備晒す訳ないだろ?」
そう呟きながらバリーはナイフを取り出し、網の間からニワトリの心臓にあたる部分に突き刺した。
《コケッ…。》
ナイフが刺さるとコカトリスはぐったりとして動きを止めた。
「おぉ…鮮やかな手腕だね。」
「勇者のパーティとかの才能もあるメンバーだと白兵戦がメインでも圧倒出来るんだろうけどこっちは姑息上等のハンターなので………!?」
《シャー!》
ガウリュが拍手するのに自虐的に返すと後ろでぐったりしているコカトリスの尾が動きだし、網を突き破ってバリーに体を伸ばしてきた。
「バリー!?」
《シャーーーーーー!
…!?》
エアリィが咄嗟に叫ぶ、その瞬間どこからともなく巨大な風の刃が出現しコカトリスの体をニワトリと蛇のまとめて縦に両断した。
「ダメだねぇ、混ぜ物のエネミーの心臓一つ潰した程度で油断しちゃ。」
見た目はエアリィと同じ位の年齢の少年が小馬鹿にしたような笑い声を出しながらバリー達の前に現れた。
「えーと…助かったけど、だれ?」
「僕?僕は…そうだな…ニャルタとでも呼んでよ。
僕がこの屋敷で休んでいたら騒がしいからそのコカトリスが騒がしいから折檻してやったんだ。
ホントは君達も処理しようかと思ったけど、面倒だし多分コカトリスが騒がしくなくなったら静かになると思ったから攻撃しなかったけど、君達は?
勇者のパーティ?よくここに僕が居るのが分かったね。」
「「「何言ってるの(です)?君?」」」
突然の事にガウリュを除いた三人は面食らって疑問を顔に浮かべている。
「もしかしてだけど…君はこのエネミーを生み出した…。」
「そう、僕が『魔王』さ。
で?君達は誰なんだ?僕と討伐する勇者なら戦ってあげるけど、どうする?」
魔王を名乗った少年『ニャルタ』は魔力を溜めているのかバリー達へ伸ばした掌は光を放っている。
「えっ…どうするの?僕達ここで魔王と戦うの?」
「恐らく無理でしょう、あの手に貯めた魔力を雑に放つだけで私達は木っ端微塵に吹き飛びます。
さようならおねーちゃん。おにーちゃん。」
狼狽えているエアリィとリン、そこにバリー「どうするもこうするも…」と呟きながら口火を切った。
「俺達は別に勇者でも無ければお前を討伐に来た訳でもない。
俺達はエネミーで料理作ってる料理人だ。
コカトリスが美味そうだから味を確かめに来た、コレから試食がてらコイツを食べるんだけど、お前もどうだ?」
若干の嘘を交えつつ敵意が無いことを伝えた。
(ちょっと!?なんで食事なんて誘ってるの?)
(だって、話が分からない相手じゃ無さそうだし、敵意が無いことを伝えれば助かりそうじゃん?)
(自分で作ったエネミーを食べると言われて怒るかもしれないじゃん!)
(そんな事するヤツだったらうるさい程度で殺さないって。
それに、食事中にポロっと色々と情報聞けるかも知れないし。)
バリーとエアリィがコソコソ話してる間にニャルタは少し考えた素振りを見せて。
「君達面白いね。
エネミーを食べるなんて考えたこと無かったし、お腹も減ってるから貰おうかな。」
「よし、じゃあ待っててくれ。
すぐ取りかかる。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「さて、手も洗った所で始めますか。
まずは…ジャジャーン!米!安心安全の海の国産!
実はコカトリスとの戦闘直前に洗って水に浸してた鍋に入れたら火にかける。」
手慣れた様子で米を鍋に入れて水を張って火かけた。
「エアリィ、この鍋を見張ってくれないか?」
「巣を見つけた時に何かし始めたと思ったら…
それにしてもこの固そうなの、食べるの?」
「コレは文句なしで美味いぞ?
何か変化があったら言ってくれ。」
「綺麗に洗ったニワトリ部分のモモ肉を一口台に切って…ヘビ部分も毒腺のある頭周辺を避けてニワトリよりも小さく切る。
そうだ…リン、あの火が消えた巣の中を探して卵がないか見てきてくれないか?」
「構いませんが…当然のように私もこき使うんですね。」
肉を切りながらバリーは既に火が消えてる巣を指差し、リンも渋々ながら巣へ向かった
「卵?もしかして食べるの…?
肉も気が進まないのになぁ…。」
「玉ねぎを薄切り、鍋に薄く水を入れて火にかける。
そこに砂糖と酒、コレまた海の国産の醤油って名前の調味料を入れて煮たたせる。」
独り言を言いながら、腰のポーチからテンポ良くよく調理器具や調味料を出し入れしてバリーは調理を進めて行く。
「空間拡張魔法を使用して小さなポーチを広げて大きなモノを持ち運ぶってのは冒険者は良くしてるらしいけど、たかが料理のためにあそこまで多くのモノを持ち込む冒険者は見たことないなぁ、そもそも携帯食料の方が軽いし便利なんじゃないのかい?」
その光景を見ながらニャルタはガウリュに疑問をぶつけた。
「君の種族が何かは知らないけど、私達人間やそれに準じた生き物は食べることを一つの娯楽にしてる種族だからね、ホントは他の冒険者も美味しいものを食べたい、でも持ち運べる量には限度があるから携帯食料があるんだよ。
所で、君はなんでこんな森の廃墟に居たんだい?
魔王は北の山に巨大な城があってそこに構えているとか、この世界の裏側に居るとか言われているけど。」
「何でだと思う?
まぁ、たとえ当たったいたとしても僕は僕の不利になるような情報は教えないけどね。
それに、間も無く僕もここの屋敷からは去ろうと思ってたから君達が帰ってここの情報を勇者に流した所で居ないだろうけどね。」
「だよね…今は私達へ攻撃しないことだけに感謝することにするよ。」
「この世界で一番の都市のセンセーは賢明だねぇ…。」
「バリー!言われた通りに火を強めたよ!」
「じゃあ、時々蓋を取って米を下から上にかき混ぜてくれ、時々。
さて、煮たった汁に鶏肉と玉ねぎを入れたら更に三分ほど煮込む。」
「沸騰して…湯気が減ってきた…あっ良い匂い。」
「その匂いがちょっとだけ焦げた匂いに変わったら火から下ろしておいてくれ。」
「おにーちゃん、卵取ってきました。」
「ありがとう…ニワトリの卵を想像してたけど、卵は柔らかいヘビなんだな…後でメモしておこう。
煮込んだ鶏肉に卵を溶いて回し入れる。
卵が少しだけ固まったら…完成。
米はどうだ?」
「少しネチャネチャした感じになったよ?
これで良いの?」
バリーは火から下ろされた米を一口味見し
「うん、上出来。
じゃあ、コレを丼に盛ったらその上に煮た鶏肉と卵を乗せて…『コカトリスの親子丼』完成!」
~~~~~~~~~~~~~~
「お待ちどおさま。」
「おぉ…今回は美味しそうだね。」
「いつもは美味しくなさそうみたいな発現やめろ。」
「エネミー作る時も思ったけど、食事する必要があるって大変だねぇ。」
ニャルタはニヤニヤとしながらスプーンを握って不器用そうに親子丼を口に運び、それと同時に他の三人も食べ始めた。
「!!
お米美味しい!甘いし、上の具の汁が染み込んでる所は肉と卵の味が着いてて良い!」
「鶏肉と蛇肉の食感の違いが楽しいね、卵は鶏卵より少し濃いかな?」
「エアリィのストレートな味のリアクションとガウリュさんの詳しい解説ありがたいなぁ…。
リンはどうだ?」
リンに目を向けるとその身長は伸びていたがマンドラゴラと比べると伸びていない。
バリーが身長を測ると。
「105cm…マンドラゴラよりは少ないか…。
危険度イコール魔力量って訳ではないんだな。
そう言えば、魔王くんは…?」
「ふぅ…。」
ニャルタを見ると既に丼は空になっていて満足そうな顔をしている。
「うわぁ…分かりやすい。」
「コレはまた、別方向で嬉しいリアクションだな。」
「大丈夫ですか?この魔王、隙だらけでこのまま討伐出来そうですが?」
「やめとけ。」
リンはストレートに緩みきった魔王の状態を述べたが、バリーはそれを静止した。
「エネミーの味なんて考えた事無かったけど、結構面白いね。
まぁ、僕は僕なりの目的があってエネミー作ってるから味目的で改造したりはしないけどね。」
「その目的って何なんだ?
素性も能力とかも聞かないから一つ位教えてくれても良いじゃん。
どうせ『ニャルタ』って名前も偽名だろ?」
「命を救ってあげたのに随分と偉そうな態度取るなぁ…。
じゃあ、一つだけ教えてあげよう。
とでも言うと思った?
残念、今回は殺さないだけで感謝しなよ。」
ニャルタはバカにしたように高笑いをしながら指を鳴らすとニャルタの体が黒く染まってそのまま闇に溶けて消えた。
「…タダ食いのみで帰りましたね。あの魔王。」
「まぁ、仕方ないか…。
良い考えも出来たし。」
バリーも自分の丼を掻き込みながら何かを思い付いたかのように呟いた。
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