第50話 ダンスの習得過程を考えてみる

人間の学習パターンは、ほぼ決まっていると思う。

ほとんどの物事は意識的、無意識を問わず、模倣、反復、改変、自在に扱うという段階を経ていく。

言語にしたって、絵にしたって、音楽にしたって、もちろんダンスにしたって同じ事。

こうした段階を経て学習していく。


言語の習得過程とダンスの習得過程を並べながら書いてみる。


<模倣>

模倣。真似する事。

幼児は周囲の音(肉親の声やらテレビなどの音声など)を真似して発声しようとする。

ダンスならば、とりあえず真似して動いてみる状況としてみる。

覚える為には<反復>を行っている。

何度も繰り返し、トライ & エラーを経て習得していく。

幼児語から発展し、お母さんの口調を真似たりもする。

ダンスならば、ステップやムーヴを覚える事にたとえられるだろう。


ダンスのレッスンや練習は、模倣と反復にある。

英会話などもそう。

覚える為には、基礎を身に付ける為には、とにかくお手本を真似する事を繰り返すしかない。

絵ならばデッサン、音楽なら耳コピーや楽譜通りに演奏したり歌う事がこれにあたる。


そうしてコツを掴んでいくうちに、自分なりの<改変>を加えたくなってくる。

試行錯誤を繰り返し、こう変えた方が面白いだろうと「実験」をしてみる。

そうなると、次の段階に移行する事になる。


基本的な扱い方がわかってくると、「変え様」が見えてくる。

例えばアップで取っていたステップをダウンで踏んでみるとか、足のイン・アウトを逆にしてみるとか、違うジャンルの動きを取り入れてみたりと、既存のものを使って遊んでみる。


<自在に扱う>

幼稚園に入る手前辺りから、自分の意思を相手に伝えようと、自分なりの言葉を使って会話するようになる。

ダンスならば振付や即興(インプロビゼーション)がこれにあたるだろう。


人によって振付の創り方やインプロビゼーションのやり方は違うだろうけど、僕なりの考え方を書いてみると、まずは音ありき。

音を聴いたときに感じた雰囲気で動く。

明るい曲なら楽しそうに、悲しい曲なら切なそうに、渋い曲ならシックに、激しい曲なら荒々しく、静かな曲なら穏やかな気持ちで動いてみる。

メロディーでもリズムでも、自分が好きなフレーズに「身体を重ね合わせ」ていく。

ドン!ドン!という音で足を踏んでみたり、メロディーに合わせて動きを流してみたり。

そうして音に「乗っていく」と、感覚が掴めると思う。


しかし、感覚というものはどんなに言葉を費やしてみても、抽象的な言い方になってしまう。

「音楽を身体を使ってスケッチしていく」だとか、そんな気障な詩めいた言い方が出てきてしまう。

「思うがままに踊る」

これに尽きると思うのだが、それだと説明として不親切だし。


…踊りを語るのは、ホント、難しい。

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