第51話 酒のはなし

「お酒好きそう」とよく言われる。

おじさんだからだろうか?

実際好きだから「はい」と答えると、その後は大抵「お酒強いんですか?」と訊かれる。


この質問は非常に答えづらい。

何故ならば、強い・弱いという表現は、何かと比較しなければ成り立たないからである。

「まぁ、ウチの親より弱いけど、おじいちゃんよりは強いよ」と言ったところで、理解してもらえないし、「まぁ、人並みかな」とは言うものの、その「人並み」ってどんなもんなんじゃい?と突っ込まれたらアウトだ。


飲める日と飲めない日がある、というのが一番しっくりくる。

飲める日はガバガバと日本酒もワインもビールも飲めてしまうが、飲めない日はビール一杯すら飲めない。

体調に左右される程度なので、口が裂けても「お酒強いです」とは言えないだろう。

僕の中での酒豪のイメージは、常にぷんと熟柿じゅくし臭く、起きたら迎え酒、一升瓶から直接酒を飲む感じ。

うん、体調になんて左右されなさそうだ。

一方、酒が弱い人のイメージは今は亡きウチの母方のじいちゃんである。物凄い下戸げこで、揮発きはつしたアルコールの近くにいるだけで酔っ払ってしまうほど。

本当に隣で酒を飲んでいる人と話してるだけで酔っ払ってしまっていた。

酒の噺のマクラでよくやる小咄こばなしを地でいく様な人だった。


僕は酔うと単純に気持ち良くなってゲラゲラ笑い出す、単なる「笑いの沸点が低い人」と化す。

一度だけ、記憶を無くした事があるが、基本的に記憶が無くならないので、後であんな事をした、あんな事を言ってしまった、と想い出して赤面するがアフター・ザ・フェスティバルである。


僕は「ぽーっ…」といい心持ちが持続している状態が一番好きなので、たまに水やジュースをチェイサーとして飲んで、いい塩梅をキープするように心がけている。

せっかく旨い酒を飲んだのに、吐いてしまっては勿体無いし、気分が悪くなるのも酒に対して申し訳無い。

人に迷惑かけてまで飲むものでもないと思うし。

そんな訳で、一気飲みというものが大嫌いだし、銘々が好きなものを飲めばいいと思っている。

美味しいから飲む、というのがいい。

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