第25話 ちゃあちゃんとのエジプト旅行5
1月28日。
朝6時頃に一度目をさましたが、昨日ハッサンにもらった風邪薬が効いてるのか、眠くて眠くてウトウトしてるうちにまた寝てしまった。
次に目を覚ましたのは7時で、7時半にモーニング・コールがかかるから、もう一度寝ようとも思ったけど、寝過ごすのが怖くて起きていた。
結局、昨夜のパーティで船内のスタッフたちも寝坊したのか、7時45分頃にモーニング・コールがかかってきたので、起きてて正解だった。
風邪はもうすっかり良くなった。
ハッサンのくれた薬はイギリス人からもらったもので、エジプトの市場には無い薬だという。
「この風邪薬をビールと一緒に飲めば、一発で治る」とそのイギリス人は笑っていた。
実際、その通りに飲んだら治った。
カルナック大神殿とルクソール神殿に行ってきた。
この2つの神殿は繋がっていて、行き来出来るようになっている。
カルナック大神殿は万物の父・アテン大神を奉る神殿で、ルクソール神殿はアテン大神の妻、ムート女神を奉っていて、2柱の神々の結婚記念日であるオベット祭のときにアテン大神とムート女神の像を逢わせるという。
ここルクソールは、元々テーベという名前(僕にはこの名前の方が馴染みがあるけど)だったが、アラブ人が来たときに神殿を見て、王の住む宮殿と勘違いしてしまい、宮殿の複数形「アルクスール」と呼んだ。
それを言いやすいように変えて、ルクソールと呼ぶようになったという。
ルクソール神殿には、イスラムのモスクとキリスト教の教会(といっても小さなもので、ヒエログリフの壁の上に
また、首の無いラムセスⅡ世の立像や、顔を抉り取られたツタンカーメンの妻の座像などがあった。
これはどういうことかというと、昔エジプトでは、死んでからもミイラがあれば魂が戻ってきて復活できると信じられていたが、ミイラが盗まれたり破壊されたりすると、もう復活できないので、石像(立像や座像)を作った。
でも、この石像は結局バックアップの役割を果たすものなので、ミイラと同じく盗まれたり破壊されれば復活できない。
それなのに、何故ラムセスⅡ世とツタンカーメンの妻の像は壊されたのか?
ラムセスⅡ世はヨーロッパ人から「ラムセックス」と呼ばれるほど、好色な王で、彼に一番可愛がられた妻ネフェルタリは「
あまりに好色過ぎるラムセスⅡ世に復活して欲しくない人々は、わざと首を切った状態の立像を作ったのだった。
ツタンカーメンの妻の場合は、かなり可哀想だ。
ツタンカーメンは二十歳で亡くなり、ツタンカーメンの妻はまだ十六歳だったので、再婚したいと思った。
しかし、昔のエジプトでは再婚は許されない事であり、彼女は殺されてミイラにされ、ナイル川に流され、ツタンカーメンの生前に造られていた座像の顔までも抉られてしまったのである。
今日はカルナック大神殿とルクソール神殿で遺跡巡りは終わりで、午後に街の市場に買い物に行った。
ルクソール神殿の帰りに貴金属店に寄り、カルトゥーシュのペンダントヘッドを作った。
カルトゥーシュとは、楕円形の中にヒエログリフで名前を記したもので、僕は自分の名前だけで作ってもらった(普通は裏面にツタンカーメンやトトメス、ネフェルタリ、クレオパトラ等の名前を記すものらしい)。
仕上がりは明日との事で楽しみだ。
市場にはちゃあちゃんと他の旅行客のおばさんたちや若い女の子たち(年齢を訊いたら二十六、二十八、二十九歳との事で驚いた。もっとずっと若く、可愛く見えたから)と一緒に行ったのだが、その三人の女の子たちと一緒に買い物に行くことになった。
彼女たちは昨夜安全カミソリをくれた人たちで、普段はスチュワーデスをしており、英語がペラペラなので、交渉は彼女たちにまかせっきりになってしまった。
香水瓶屋さんとTシャツ屋さんに行ったのだが、店員に
「あなたの妻たちですか?」と尋ねられ、彼女たちに
「はい、1号、2号、3号です」と言われ、僕が黙っていると店員から
「一人寄越せ」と言われた。
その店員に「あなたはカサノヴァか?」と言われたから、
「はい」と答えたら笑っていた。
店員たちと打ち解けたので、一緒に写真を撮った。
買い物が済んで船に帰る途中、ハッサンと添乗員さんに会ったので、ハッサンに頼んで水煙草を吸っている人たちのところで一緒に吸わせてもらった。
水煙草は、丁度長いストローでジュースを飲むような感じで吸う為、かなり肺活量が必要なシロモノだった。
一口目は煙も出ず、二口目でむせて、三口目辺りから味がわかってきた。
少しキツめだったのだが、ハッサン曰く「プロ・ユースの水煙草」で、喫茶店に行けばもっと吸い易いものがあるとの事。
19時半に船のロビーに集まり、カルナック大神殿に行って「音と光のショー」を観た。
ディズニーランドのホンテッド・マンションとシンデレラ城ミステリーツアーみたいで面白く、美しかった。
夕食は21時過ぎで、食べ終わってから2時半くらいまで踊ったり、酒を飲んだりしていた。
ハッサンや添乗員さん、女の子のうちの一人、一緒の旅行客のおじさんと「男と女について」語り、話題はそのうち「仕事の話」となり、エジプトの夜は熱く過ぎていった。
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