第24話 ちゃあちゃんとのエジプト旅行4
1月27日。
目を覚ますと、船の窓から見える景色が流れていた。
全く揺れが無いので、動いていないと感じるほど。
対岸には広大な砂漠が広がっているが、不毛という訳では無く、岸辺には木々が生えている。
僕は相変わらず風邪の症状に悩まされていた。
プトレマイオス朝時代に建造されたコム・オンボ神殿(コムは丘、オンボは金という意味)には、ワニの頭をしたセベク神とハロエリス神(ホルス神)が祀られている。
ここにはナイロメーター(ナイル川の水位を測る井戸の様なもので、水量によって税が決まったという)や世界最古のカレンダー、ワニの
セベク神とホルス神の礼拝所の間に地下室があり、プトレマイオス朝時代の外国人の支配者が神託を聞きに来ると、神官たちが地下に潜って答えていた(つまり、実際は神官たちが支配していた)。
コム・オンボはカイロより南に位置しており、真夏の様に暑い。
船に戻ると、エドフに向けて出港した。
昼食後にハッサンが良く効く風邪薬をくれた。
エドフでは場所に乗って、天空神ホルスの神殿に向かった。
ホルス神殿のレリーフには次の様なエピソードが彫られていた。
昔、エジプトには大地が存在しなかった。全てナイル川(というか、巨大な水たまり)だったのだが、一つの山が水面に浮上した。この山を最初の神・アテン神が左足で踏みつけると、大地の神・ゲッボ神と天空の女神・テフヌート女神の二柱の神が生まれた。ゲッボ神とテフヌート女神は結婚し、オシリス神とセト神の兄弟とイシス女神とニフティース女神の姉妹が生まれた。
オシリス神とイシス女神は心の優しい神々で人々に愛されたのだが、セト神とニフティース女神は邪悪な心を持った神々で、常に悪事を働いていた。
オシリス神とイシス女神、セト神とニフティース女神はそれぞれ結婚したが、人々に愛されるオシリス神とイシス女神を妬んだセト神は、オシリス神の身体にぴったり合った箱を拵えた。この箱は非常に美しく、誰もが欲しがるものだった。
ある宴の席で、セト神は「この箱に収まった者に、この箱をやろう」と言った。
皆、順番に入ろうとしたが誰も入れず、いよいよオシリス神の番となった。オシリス神の身体は箱の大きさにぴったり収まる。その刹那、セト神は箱に蓋をしてナイル川に投げ込んでしまった。
その事を知ったイシス女神は両腕を翼に変えて、ナイル川を飛び回り、オシリス神の入った箱を発見して、無事オシリス神は救出された。
殺したはずの
オシリス神の十三個の肉片を繋げ合わせ、イシス女神が祈りを捧げると、オシリス神の肉体に魂が宿り、イシス女神はホルス神を身籠った。
オシリス神は冥界の神となり、イシス女神はホルス神を愛と美の女神・ハトホル女神に託すと、自らも夫と共に死者の内臓の守護神となった。
生まれたばかりのホルス神は
その後、ホルス神は太陽神・ラー神と合体し、ラー・ホルアクティ神となった。
…という物語が神殿中に描かれていた。
また、壁の一部はギリシア人が作ったので、ライオン型の
ホルス神殿の帰りに市場へ行き、ガラベイヤという民族衣装を買ったのだが、力づくで店内に引っ張り込まれ、荷物を全て取り上げられて、「100ポンドよこせ」と言われた。相場は30~40ポンドと聞いていたので、「20ポンドだ」と応えると「じゃあ、その時計と交換だ」と言ってきた。
ぶっちゃけた話、その時計は安物だったので、内心ほくそ笑んで時計を渡したら、「これで20ポンドだ」と言ってきた。どんなに粘っても20ポンドより下がらないので、結局20ポンドと時計で購入する事になった。
船に戻ってシャワーを浴びた。
「髭剃りを忘れてしまった」という話をしたら、知り合ったジュンコさんという若い日本人女性が安全カミソリをくれた。
ティー・タイムでハッサンがロシア人女性に「彼は踊れる」と言ったので、コサック・ダンスの真似をしたら、喜んでくれた。踊りは正にボディ・ランゲージだ。
夜中、船上でガラベイヤ・パーティに参加した。
ガラベイヤを着て、ハッサンにターバンを巻いて貰った。
ゲームをしたり、踊ったりした。
ゲームの内容は、腰に紐を結び、紐の先にジャガイモを括り付けて、床に置いてあるもう一個のジャガイモにぶつけ、床のジャガイモを誰が一番早くゴールまで持っていけるか?というものと、男性と女性がペアを組み、女性が男性の身体にトイレットペーパーをグルグル巻いていって、早くミイラを作れたペアの勝ち、というもの。
どちらのゲームにも勝って、とても楽しかった。
ダンスは初のオンステージ(ソロで)だったから、緊張した。
日本から持っていったZOOのHOUSE MIXでハウスを踊った。
楽しい一夜だった。
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