第23話 ちゃあちゃんとのエジプト旅行3

1月26日。


僕たちは早朝に起床し、カイロからアブ・シンベルに行く飛行機に乗った。

昼間はあんなに騒がしかった街も、すっかり寝静まっている。

飛行機の小さな窓から、朝焼けに染まる広大な砂漠が見える。薄く靄のかかった砂漠の日の出は、とても幻想的で美しい。上は青、下は砂漠、その真ん中に朱が溶け込んでいた。


アブ・シンベル大神殿は、ナイル川にアスワン・ハイ・ダムが建築される事となり、人工のナセル湖のほとりに移設された。ラムセスⅡ世の巨大な座像が特徴的だった。

この神殿の北にはラムセスⅡ世の大のお気に入りの妻(彼には100人以上の妻がおり、英語には彼を“ラムセックス”とからかう言葉があるという)ネフェルタリの為のハトホル神殿がある。

ラムセスⅡ世はアメン神を信仰していて、大神殿の内側にはアメン神が数多く描かれていた。

ハッサンにハトホル女神の名前の由来を教えて貰った。


冥界の支配者であるオシリス神とイシス女神が結婚した時、オシリス神の兄であるセト神が嫉妬して、オシリス神を殺してしまう。魔法の女神であるイシス女神は、その魔力によって自らの両腕をはやぶさの翼に変え、セト神にバラバラにされたオシリス神の死体を集めて復活させた。そしてオシリス神とイシス女神の間には、隼の頭を持つ天空神・ホルスが生まれた。今度はセト神がホルス神に害悪を為そうとした。ホルス神はセト神の魔の手から逃げ延びて、ハトホル女神に育てて貰ったのだという。

エジプトの古代文字で家を表す文字が四角なのだが、この四角の中にホルスを描くと、それでハトホルと読むのだそうだ。


アブ・シンベルからアスワンへ移動した。周囲は全て柔らかい砂地で、歩くと少し沈み込む。

アスワン・ハイ・ダムとアスワン・ロー・ダム、そしてハトショプス女王がオベリスクを作らせていたという石切り場などを見学後、アスワンでナイル川に停泊していた巨大クルーザーに乗り込んだら、再び熱が出た。

ちゃあちゃんが日本から持ってきた湯沸かし器で味噌汁を作って飲ませてくれた。

本来の予定では午後から帆掛け船・ファルーカでナイル川遊覧だったが、そのままクルーザーの部屋で寝る事にした。


夜、ふと目が覚めると甲板の方からダンス・ミュージックのリズムが響いているのが聞こえてきた。CLUB状態になっているらしく、外国人の叫ぶ声が聞こえる。

「ああ、いいなあ、踊りたいな…」と思いつつ、僕は再び眠りに落ちていった。

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