第22話 ちゃあちゃんとのエジプト旅行2

1月25日。

カイロ空港で日本円をエジプトの通貨(エジプト・ポンド)に両替すると、物凄い分厚さの札束が戻って来て驚いた。少しベタつく手触りの紙幣を財布に入れて、懐にしまい込む。

空港からホテルに向かうバスの中から、薄ぼんやりとピラミッドが見えた時、「ああ、エジプトに来た!」とテンションが上がった。

この日泊まるMarriott Mena Houseというホテルは、ギザの三大ピラミッドのすぐ近くにある。

僕は勝手にギザの三大ピラミッドは都市部から離れた砂漠の只中にあるものだ、と思い込んでいたので、少し残念だった。


ホテルに着いてのんびりする暇もなく、バスに乗ってカイロ市内巡りをした。

カイロ市内の道は人と自動車と自転車、バイクの他にロバやラバが入り混じっている。ガイドのハッサンが「エジプトの運転手は世界一の運転技術を持っている」とうそぶく。わずかながら信号機があるにはあるのだが、信号の役割を果たしておらず、たくさんの車両や人々、動物が信号無視をして突っ込んできても、上手いこと避けられるからだそうだ。

自動車のほとんどにサイドミラーが無い。その為、クラクションで存在をアピールして走るからとても騒がしい。

走っている車種は中古のプジョーとフォルクスワーゲンが多い。日本車が一番人気があるが、300~400万円くらいの価値(当時)があるので、買う人が少ないという事だった。

2位はメルセデス・ベンツ。3位がプジョー。

ガソリンはリッター35円前後(当時)。だから、エジプト人は地下鉄には乗らず、自動車で移動するのだ、という。


エジプト考古学博物館では、イシス女神やハトホル女神のレリーフや、ツタンカーメンのピラミッドからの出土品(あの黄金のマスクや棺、そして何とツタンカーメンが使っていたという避妊具までもがあった)、猿の木乃伊ミイラなどを見学した。

その後、バザールへ。

驚いたのは、日本語がわかるエジプトの人たちが日本の駄洒落を連発して来る事だった。

その当時のNECのコマーシャルのコピー「バザールでござーる」はもとより、「イカはもういいか?」だとか、「ラクダは楽だ~」といった駄洒落を耳にタコが出来るほど聞かされた。

行商人たちが会話の最後に「儲かりまっか?ぼちぼちでんな」と、恐らく意味もわからず言って来てかなり笑わせて貰った。


それからギザの三大ピラミッドを見学した。

ピラミッドの周辺には幾人もの観光客と行商人、ラクダに観光客を乗せて写真を撮影する業者などがひしめき合っていて、行商人が「ノーマネー、プレゼント」などと言いながら何とか商品を持たせようとしてくる。

僕は両手をポケットに突っ込んでいたにも関わらず、無理やり商品を腋の下に挟み込まれたので、慌てて返したりした。


クフ王のピラミッドに登る。内部は照明で明るく照らされており、思ったより狭かった。

玄室げんしつは暑く、室温は40度くらい。ガイドのハッサンによれば、この温度が物を腐らせない理由の一つなのだという。

クフ王のピラミッドの見学の後、メンカウラー王、カフラー王のピラミッドに向かう。こちらはイメージしてた砂漠の中にポツンと存在しているピラミッドといった風情。聞けばテレビ局のカメラは、わざと市街地側から撮影しているので、ピラミッドの周囲は砂漠、というイメージを作っているという。

街を振り返れば、アラビア語で書かれたコカ・コーラの看板が見える。


とりあえず、ラクダに乗ってちゃあちゃんと写真を撮り、アブ・ル・ハウル(スフィンクス)を見学しに行く。スフィンクスは思ったより大きく見えた。「砂嵐などの影響で少しずつではあるがスフィンクスがすり減ってきている為、近々、スフィンクスは巨大なガラスの中に閉じ込められてしまうだろう」という話を聞いた(あれから25年が経過したが、ガラスで覆われてはいない)。

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