第21話 ちゃあちゃんとのエジプト旅行1

ちゃあちゃん(母方の祖母)が、

「お前が二十歳になったら、どっか外国に旅行に連れてってやるよ。何処がいい?」

と言う。

じいちゃんとちゃあちゃんは海外旅行が趣味で、のべつ色んな国に行っていたので、そんな事を言ったのだと思う。

過去にもタイ、ハワイと連れて行って貰っていた。

僕は考古学なんかも好きなので、

「エジプト」

と言うと、ちゃあちゃんは嬉しそうに

「エジプトは行った事が無いから行ってみたかったところだ。わかった」

と応えた。


二十歳になり、明くる年の1月24日。ちゃあちゃんと二人でエジプトに行く事になった。

目に映る全てが、沈みかけた夕陽によってオレンジ色に染められた頃、飛行機が動き始めた。


僕は高所恐怖症な事もあり、飛行機が苦手である。出来れば乗りたくない。

地に足がついていない感覚が怖いというか。

この飛行機がまたよく揺れた。おまけに風邪もひいていて、踏んだり蹴ったりである。


機内食を食べた後、ウォークマンでB’zの『LOOSE』というアルバムを聴きながら、村上春樹の『羊をめぐる冒険(上)』を読んだ。

機内ではショーン・コネリー主演の映画が掛かっていたが、観た事がある作品だったので、本を読む事にしたが、気が付いたら寝落ちをしていた様だった。

機内は恐ろしく乾燥しており、僕の頭は酷くぼぉーっとしていた。

スチュワーデスさんにコーラを貰って一息つくと、何個目かわからないのど飴を口の中に放り込んだ。


途中、フィリピン、タイを経由してエジプトへ至る航路だった。

マニラに着く頃に発熱し、朦朧もうろうとした意識の中、窓から外を眺めると眼下に広がる島々を巡る道路が、まるで輝く光の血管の様だった。

マニラでもバンコクでも、機内に残ったまま過ごした。スチュワーデスさんが氷嚢ひょうのうを作ってくれた。


二回目、三回目、四回目と機内食が出たが、食事をする元気も無かった。

せっかくちゃあちゃんが連れて来てくれている旅行なのに、申し訳無い気持ちでいっぱいになった。


熱が39度から38.5度に下がると、多少はマシになった。

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