第64話 Sランクの異分子たち①
わたしはモストを睨みつけながら、口を開いた。
「ミラージュ……って言ってたわよね、あなたたち。ミラージュって、どんな組織なわけ?」
少しでも、情報を知っておきたい――そう思ったわたしは、頭ごなしに拒否することをやめ、探りを入れることにした。
ここでこいつらを撥ね退けることは簡単だ。
しかし、こいつらは麻子失踪に関わっているはず。
だったらわたしがすべきことは決まっている。
ここで逃がすわけにはいかない。
「ミラージュはAランクの魔法少女ひとりと、Bランクの魔法少女およそ三十人が属する魔族討伐組織です」
瑠奈が横から口を挟んできた。
「……その、AとかBってなんなの?」
「魔法少女の強さを表すランクのことです」
「強さのランク……? Aランクの方が強いってことよね?」
「そのとおりですが」
「え……ちょっと待ってよ。それじゃ、ミラージュって大した組織じゃないんじゃない?」
わたしは、最初に瑠奈に言われた言葉を思い出した。
『……今のを防げるなんて……驚きました、さすがはAランクの魔法少女です』
確かに、彼女はそう言っていた。
わたしがAランクだと言うのなら、ミラージュにはわたしと同等の魔法少女がひとりいるだけで、残りは全員わたしよりも弱いということになる。
「……そもそも、Aランクの魔法少女なんてほとんどいないんですよ」
気に障ったのだろう、少しむっとしたような顔をして瑠奈が答えた。
「現在魔法少女は百人以上いますが……9割以上がBランクの魔法少女です。Aランクの魔法少女なんて、ほんの一握りなんですから」
「へー……そうなんだ」
「それなのに、Aランク以上の魔法少女は問題児ばかり……魔法少女としての自覚に欠けています!」
「え、ええ?」
突然声を荒げた瑠奈に思わずたじろいてしまう。
わたしの周りにいた魔法少女……麻子も芽衣も、率先して魔獣を倒すような魔法少女ではなかった。
だから、こんな真面目な魔法少女が実在していたとは驚きである。
「魔獣討伐数なんて、Aランク以上の魔法少女全員合わせても、Bランクひとり分ほどにしかならないのですから! ほんとにもうあなたたちは……」
「えっと……なんかごめん」
そんなこと言われても、わたしは冬にほんのちょっと魔獣と戦っただけである。
今、魔獣が再び活動していることすら知らなかったのだからどうしようもない。
「それじゃ、そのAとかBって……どうやってランク付けしているの?」
クドクド文句を言いながら説教モードに突入した瑠奈の話を軌道修正するため、話を戻す。
「む……そうですね。Bランクは、魔獣と対等に戦うことができる魔法少女といったところでしょうか。一方のAランクは、魔獣討伐を苦にしないほど強力な魔力を有する魔法少女です」
「ほうほう」
魔獣討伐を苦にしないほど強力な魔力……それならわたしは間違いなくAランクだ。
初めて魔獣と遭遇したときでさえ、わたしの炎魔法で簡単に一掃することができた。
だから、魔獣討伐はなんて簡単なのだろうと思っていたのだが……ほかの魔法少女では、そうもいかないということか。
「そして、Aランク以上の存在……Sランクの魔法少女も存在します」
「Aランク以上の……Sランク?」
「そうです。この、Sランクが問題児ばかりなんですよ」
瑠奈は一呼吸おいて、ふーっと息を吐いてから続けた。
「化け物揃いの異分子たち……そんなSランクの魔法少女が、ミラージュの間でなんて呼ばれているのか教えてあげましょうか?」
「……なんて?」
「『
災害級……なるほど。
この子の口ぶりからするに、芽衣はきっとSランクに位置付けられるだろう。
それは概ね納得できる。
わたしは、本気の芽衣が纏う漆黒のオーラをこの目で見たことがあるのだから。
「……なるほどね。今言った、三つのランクに分類されるってわけ」
「いえ、実際にはもうひとつ……Bランク未満とされたCランクの魔法少女がひとりだけいるのですが……まあ、それはいいです。魔力がほとんどない人なので、戦いに出ることもないでしょうから」
「……へえ?」
ひとりだけ……気にはなるが、碌に魔力のない魔法少女ということならわたしたちの障害になることはないだろう。
深追いせずに、瑠奈の話を聞くことにした。
「それで? そのSランクの問題児っていうのが、芽衣って言いたいのよね?」
「それだけじゃありませんけどね……順番にお伝えしましょう。まずは、Sランクの魔法少女から」
瑠奈は、三本の指を立てて語り始めた。
「Sランクに位置付けられている魔法少女は……三人います」
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