第53話 モアは姿をくらませる
「ふぁ……ねむ……」
麻子と芽衣との勉強会から、数日が経った。
お風呂から上がったわたしは、濡れた髪をトントンとタオルで拭きながらボーっとしていた。
暑い日が続いて疲れているせいだろうか、最近はすぐに眠くなってしまう。
早く夏休みになって、毎朝早起きしなくてもよい生活を送りたい。
相変わらず学校は面白くもなんともないので、夏休みが待ち遠しい。
大きな欠伸をしながらドライヤーで髪の毛を乾かしていると、ベッドの上に置いていたスマホの通知音が鳴った。
「ぅ……ぐ……」
ドライヤーを右手に持ったまま必死に左腕を伸ばしてスマホをとったわたしは、画面を見た瞬間に眠気が覚めた。
「……え? モアが……いなくなった?」
わたしと麻子と芽衣は、ひとつのライングループを作っている。
そこに、芽衣からモアがいなくなったとメッセージが送られてきたのだ。
十秒も経たないうちに、麻子からも反応があった。
『モアが? いつから?』
『一週間ほど前からです』
『そんなに? モアからは何も聞いてないの?』
『はい……何も言わずにいなくなってしまったので』
「……どうしたのかしらモア。急にいなくなるなんて」
芽衣は以前から、モアが姿を消すことが度々あると言っていた。
だから心配ないとは思うが、何も言わずに一週間も姿を消すなんてことがあるだろうか。
手グシで髪を軽く下に引っ張りながら考えていると、麻子からさらにラインが送られてきた。
『思い当たることは何もないの?』
『ないです……最近もちょくちょくいなくなってたんですが、どこに行っているのかは聞いても教えてもらえなかったので』
「ふーん……どういうことなのかしら」
もし、もう芽衣を見張る必要が無くなったということなら、わたしたちにひとこと言うべきだろう。
それなのに何も言わずにいなくなったということは、何か理由があるのではないだろうか。
この前会ったときもほとんど眠っていたし、なんだか怪しい気がする。
あのモアのことだ。何か企んでいるのではないかと勘繰ってしまう。
『ちょっと待って! モアがいなくなったということは、芽衣ちゃんこっちに来れないってこと!?』
『そういうことですね』
麻子からガーンとショックを受けた奇妙な鳥のスタンプが連投された。
前に遅刻したときに送られてきたときと同じシリーズのスタンプである。
なんだこれ。
『わかったよ芽衣ちゃん! もうすぐ華蓮も夏休みだし、今度はこっちから行くよ!』
「は?」
麻子のメッセージを見て思わず声が漏れる。
次の瞬間、スマホの着信音が鳴り響いた。
麻子からの電話である。嫌な予感しかしない。
「……もしもし」
「華蓮! 行くよ!」
「えーっと……一応訊いておくけど、どこに」
「芽衣ちゃんのところに決まってるでしょ! 東京!」
「……まじ?」
わたし……そんなお金ないんだけど。
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