魔法少女は闇が深い ~樋本華蓮編~

第47話 プロローグ

 わたし、樋本華蓮ひのもとかれんは魔法少女だ。

 ここだけ聞くと、頭でも打ったのかと思われるかもしれないが、本当のことなのだから仕方ない。

 わたしは数か月前、ヘンテコな異世界生物に出会い、炎を自在に操ることができる魔法少女になった。

 少し前までは、妹の病気を治すために戦ったりもしていたのだが……それも過去の話である。

 寒い季節ならこの炎の魔法も使い道がありそうだが、初夏の陽気が身体を照らすこの季節、炎など出す気にもならない。

 だから、今はもう魔法少女らしいことなど何もしていない、普通の高校生だ。


 ……いや、普通というのは謙遜が過ぎるかもしれない。

 優秀な頭脳をもつ、天才高校生と言っておこう。

 そのせいで、わたしのレベルに見合う人間は見つからなかった。

 それ故、わたしには友達と呼べる存在がいない。

 ……いや、いやいや。決してできなかったわけではないのである。

 わたしの意思で作らなかった、ということを強調しておかなければならない。

 憐みの視線はお門違いというものである。


 しかし最近、それも変わった。

 妙な縁もあったもので、今は同じ魔法少女である「黒瀬麻子くろせまこ」と「源芽衣みなもとめい」と行動を共にすることが多くなっている。

 しかしこのふたり、一癖も二癖もある魔法少女なので、わたしが振り回されることも少なくない。

 そんな厄介なふたりだけれど、不思議と居心地は悪くない。

 出会いこそ色々あったが、今は気の置けない仲となっている。

 一緒にいると、わたしの気持ちはなんだか軽くなるのだ。

 とにもかくにも、今はもう三人とも魔法少女としての役目を終えている。

 だから、ずっとこのまま一緒にいることができるだろう。

 そう思っていた。


 でも、この夏。

 まさか、こんなことになるなんて。


 やっぱり、魔法少女は闇が深い。

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