第11話 類が友を呼び、謎が謎を呼ぶ。

 夏休みにも目立った活動はなく、クラスの状況も変わることはなかった。

 

 後ろの席の佐々木たちはいつも通り同じような会話を繰り返している。

 左の今井は四六時中勉強をしている。

 右の高田たち女子集団は甲高い声をあげながら喧しく笑っている。いつも同じ会話でなぜ大笑いできるのか解りかねる。

 

 季節は流れ、冷たい北風は万人を震え上がらせる。当の俺は太陽の季節が過ぎ去ってしまったことを嘆いて、ガタガタと震えていた。

 冬生まれ、氷の能力者の癖して寒さは苦手である。

 分厚いコートを着て、マフラーをしっかりと巻き付けている。手袋もつけることにより、サンタクロースのような完全防備を可能にする。訂正。顔が凍えるため鉄壁の守りとは言えなかった。 

 竹内に暖かい空間を創り出せないものかと頼もうと思ったが、自然災害よりも恐ろしいことが起きそうなので却下した。危うくくだらない思いつきで命を落とすところだった。

  

 校舎に入っても、廊下には冷淡な風が吹き抜けている。

 北風は太陽がいないのをいいことに猛威を

振るう。

 俺に寂しさを感じさせるかの如く冷たい。

 密集して話している奴らは温かいオーラを纏っている。

 珍しく彼らを羨望していると、向かい風が吹き抜け、たまらず瞼が動く。


 するとその瞬間、違和感を覚えた。

 辺りに霧が立ち込めて、まさに五里霧中となっている。

 当然頬をつねった。夢ではない。

 目を瞑った刹那に霧が発生するなど俄に信じがたいことである。

 だとすれば答えは一つ。

「能力者の仕業の違いない」

 ただ問題は犯人に心当たりがないことだ。

 部の誰かかと考えを巡らせたが、霧崎と森下は実際に能力をこの瞳で見ているし、竹内は謎が多く、怪しさを前面に押し出していたものの、奇妙な行動は確認出来なかった。

 

 これで三人とも候補から外れた。となれば第三者の犯行だと考えるしかない。

 もとより俺はずっと振り出しにいた。

 しばらくして霧はすーっと消えていった。

 一方で、俺の中には霧のようなもやが残っていた。

 

 青年がついた細い溜め息は窓の外の虚空へと呑み込まれていった。

 

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