第10話 彼等の諸事情

 そんなこんなで、文芸部(仮)の部活動が始まった。波乱万丈の幕開けである。

 我が文芸部の部室はよく日光が当たるが、風通しはよくないのだ。

 したがって、常時カーテンが閉まっていることに加え、みな団扇で扇いでいる。が活動するには十分な広さがある。散らかっていないことを前提として。

 俺が簡単に掃除を済ませると、彼らに能力の詳細を尋ねる。

 

 霧崎は錬成系統の能力で物体の変形、成型ができるそうだ。

 霧崎の高い分析力と創造力に相性がいいらしい。

 でも、堂々と自画自賛する様子には正直反応に困った。どうやら人の気持ちを察する想像力は持ち合わせていないようだ。

 森下がドン引きしながら続ける。

 

 森下の能力は防御で本人は「面白くない」と文句を吐いていたが、汎用性は高いと評価していた。

 確かに彼女には破壊力のある方が似合いそうである。森下に言うとなにやら危険性がありそうなので胸の奥深くに封印しておくことにした。


 最後に竹内だが、空間を操る能力だと謙虚そうに述べる。

 その言葉に驚愕する。脳の中で疑問符が渦巻き、鳴門のようになっている。

 愕然としながら首をかしげていると、霧崎と森下が激しく同意の反応を見せる。

 竹内が云うには空間を完全に閉鎖して孤立させたり、個別にした空間に移動したりするものだそうだ。

 他にもいろいろ供述していたが、何を言っているかわからなかった。

 ❲君は小説家になった方がいいんじゃないか?❳

 結局多く謎を残すこととなった。竹内はどこを取っても腑に落ちない点が多すぎて言葉につまる。

 だから、俺はそれ以上考えるのをやめた。物事には知らない方が幸せなことが多数あると知っているから。

 裏の社会の姿も、立派な人間の影も、はたまた黒歴史となり得る軌跡も。

 したがって、俺は調べないし、気にしない。そういったことは疑問を抱いて追求するよりも、そういうものだと解釈した方が断然楽である。

 それでも真相が突き止めたくなるというのは記者魂だのという安っぽい正義感で己の欲を隠していることに気づいていないからだと考察する。

 適当に相槌を打つと、彼は静かに警告を告げた。 

 

     

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