第8話 理想と期待の意味

 俺は何か勘違いをしていた。霧崎英里を侮っていた。勝手に過少評価していたらしい。彼女は思想を抱き続け、神に懇願する宗教信者ではない。理想を実現するためなら手段を選ばないたちの悪いドリーマーである。


 俺は迷った末に文芸部?に入ることにした。

 話を聞けば、三人は能力者であるという。

大方予想していたが、まさか全員がそうだとは。霧崎が造り上げたこの団体は能力者に関する事件を解決するための秘密決社?で、この学校の最高位の機密情報の一部となっている。

 

 不安と後悔で立ち尽くすだけだった俺とは違い、彼らは日進月歩、即ち日々進み続けてるのであろう。

 俺と三人の差は月とすっぽん、天と地、根本的な違いが生じている。

 自分自身でこの活動に、この部に貢献できないことなど既に分かりきっている。それでもなお生きることは諦められない。罵詈雑言を浴びせられても抗うことをやめない。それぐらいしか生き残る術が無いのだから。

 

 だから、俺は彼らに期待している。不器用で変なこの部の彼らなら器用で愚かな一般人より信用できる。

 信じることは疑うことより怖い。肯定は否定より難しい。俺はこれが初めての肯定、信頼だと自覚した。期待とは嫉妬の裏返しである。

 

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