第3話 少年の備忘録 弐

 その瞬間、少年は安心感と罪悪感を覚えた。自身の冷えた手と転がった屍を交互に見ながら、遅れてやってきた自分が人殺しをした意識が少年を震え上がらせる。

 

 それから何時間が経ったか、両親と警察が駆けつけた。彼らの目に移ったのは死体の側に立ち尽くしている少年。その状況にうろたえながらもすべてを察する。

 

 少年にとって他人の冷ややかな哀れみの視線は先の氷柱より冷たく、とても痛く感じられた。

 

 この体験によって少年の心には大きな傷だけが残った。閉ざされた心は深い眠りについた。直線は弧を描く。

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