第2話 少年の備忘録 Part1
昔々、人一倍正義感の強い少年がいた。
その少年は好奇心旺盛で活発な子供だった。
ある日、自分が不思議な力を使えると知った少年は人気のない公園で毎日練習を重ねていた。
練習を終える頃には空は黒く染まっている。
何が彼を突き動かしたのかは甚だ疑問であるが、問題はそこではない。
場所が場所であっただけに、少年はあっさりと誘拐されてしまった。時間もかなり遅かったので、さらってくれと言っているようなものだった。
だが誘拐された少年は怯える素振りも見せず、悪人を断罪できるという少しの興奮に支配されていた。
少年を拐った男は顔に掛かりそうな黒い髪を吊り下げながら、光を失った目を髪の間から覗かせて、荒い吐息を吐いている。
「この男は狂っている」。小さい子供でもそれだけは感じ取れた。
男がのっそりと近づいてくると、それまでとは一転、少年は蛇に睨まれた蛙のように足をがくがくさせることしかできなくなっていた。
少年は痺れを受け流すように壁に手をやって、躊躇う気持ちを取り去り、恐怖対象を排除しようと一心に男に狙いを定めて氷塊を放つ。
氷柱のように尖った氷は男の頭を貫き、男は鈍い音を立てて倒れる。その刹那、静寂の中で氷の砕ける音とその鈍い音が不協和音を響かせる。
血液すら凝固した男であった物を少年はぼーっと見つめ、考えを巡らせて、感情と小さな脳は動き始める。
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