第13話 提起された問い

 桃音とコンビニに行って、千夏と久しぶりに会った日から二週間ほど経った。

 あれからまた少しだけ、俺の生活は変わった。

 何が変わったか──軽くだがランニングをするようになったことだ。学生時代に戻ったとも表現できるのだが、これには色々と理由がある。まず俺の仕事がデスクワークのみであるため、身体中が凝り固まってしまうのだ。

 まだ学生の頃なら、体を動かす時間があった。体育の時間や、休み時間というものが。しかし学校ほど休憩が小まめに、ちょくちょくたるわけではない。最初はストレッチやマッサージなども試したのだが、ストレッチは何か物足りなく、マッサージは一人で出来る範囲が狭くかつ色々と必要な道具があったりして、楽にはできない。

 よって半ば消去法のようにランニングになった。幸いランニングシューズは高校時代のものが使えたので、出費もない。あって飲料代だが……基本は家にあるペットボトル飲料で済ませているため、やはり出費はないのだ。

 そしてそんなランニングを、桃音もするようになった。

 毎日ではない。しかし二日から三日に一回は一緒に走ってるように思う。そして高い確率で休憩と称してコンビニに寄り、千夏と雑談をして帰る。

 そんな生活が日常となってきたある日のことである。

 夜の帳が下り、鈴虫の鳴き声をBGMに近所を走ってコンビニにつき、レジを覗けば千夏がいた。行くといつもいるな……まあそれはさておき、俺と桃音はある程度の息を整えコンビニに入る。


「こんばんはー。今日もお疲れお二人さん」

「お疲れさんて……一応俺たち客だぞ?」

「あー、もう身内だって」

「何故に」


 確かに常連と化してはいるが、だからか? だが身内はいいすぎだろう……と思ったが、店員とここまで親しく話している時点で半ば身内みたいなモノか。


「桃音ちゃんもお疲れ様ー」

「こんばんは千夏さん」


 いつの間にか、二人は仲良くなっていた。千夏が桃音とメッセージアプリで話してると言っていたし、そこ経由なのだろう。


「いやぁ今日も可愛いねぇ桃音ちゃん」

「言い方がおじさんっぽいぞ」


 しかし気にしていない様子で、千夏はレジカウンターで頬杖をつき、商品を選ぶ桃音を見ている。


「──でも、桃音ちゃん達からしてみれば、もう私達はおじさんおばさんでしょ」

「俺たち、まだ二十代だぞ?」


 さすがにそれは──しかし元現役女子高生の言葉だ。事実かもしれない。

 千夏は大きなため息を一つ呟く。


「湊にはわからんことさぁ」

「わからないな」


 俺がそういうと、ただただ千夏は笑った。何かを呟いたような気もしたが、聞き取れないほどに小さな声だった。


「──ねぇ、湊は桃音ちゃんのこと好きなの?」


 だからかその言葉は鮮明に耳に届いて、俺の思考を凍らせた。

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