第12話 乙女の時間

 湊とコンビニから帰ってきた桃音は、自室のベッドに寝そべり、嬉しそうにスマホのメッセージアプリを弄る。左手には先ほど千夏から貰ったメモ用紙。

 これは湊も知らないことなのだが、桃音の友達もといメッセージアプリの友達の登録数は片手で数えれる程度。公式アカウントを入れれば50を優に越えるのだが、リアルで繋がりを持つ人の登録数は両手の指で数えられる程度で、その大半とは会話の一つもない。


「んーと……Chikaさん? でいいのかな?」


 可愛い猫の写真をアイコンにしている『Chika』のアカウントに友達申請を行う桃音。とはいえすぐに通知や、友達申請が通るわけではない。千夏は今、仕事中。湊の前ではあれほどふざけていたが、普段は至って真面目なのだと、仕草からわかっていた。

 いつ終わるのか──もしかしたら今日は無理かな。そう思い始めた頃、ピコンと桃音のスマホがメッセージアプリの通知音を鳴らす。

 通知に表示されている名前は『Chika』。送られてきた内容は『友達登録ありがと桃音ちゃん! これからよろしくね!』。桃音も『よろしくお願いします!』と打ち、返信ボタンを押す。


「お、送っちゃった……」


 メッセージアプリのトーク画面には、先ほど送ったメッセージがくっきりと乗っている。既読もさきほどつき、即座に返信が届く。


「『お話は明日ゆっくりしようね』──そうだ。明日も学校だ」


 色々あって忘れられていたが、明日も平日である。それに気付いた桃音はスマホの時計を見る。時刻は11時。いつもなら寝ている時間であった。


「……シャワー浴びて、寝よ」


 走っていたので少しばかり汗臭いかもしれない。そう思い、桃音はタオルを持って風呂場に向かった。










──なお、今日のことを千夏にいじられて桃音が身悶えするのだが、それはまた別の話。

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