第九話 異変

「右側は、なにもなかったなぁ」

  期待が外れたのか、落胆しているカイト。


「いや、何も起こらない事がいいんだよ。てか、カイトってオカルト、信じてるの?」

  冷静に答えるトウヤ。


「あったら面白そうだなってさー」

  カイトは、トウヤの反応が面白くないのか、少しふてくされている。


 中央の階段を上がった先は、長い一本の廊下になっていた。しばらく歩くと、中庭が見えた。中庭は、草木が生えっぱなしになり、長年放置されている事が分かる。


 その先には、大きく立派な扉があった。横に5人並んでも余裕で通れるだろう。


「デカっ!」

「すごいね、いつ作られたんだろう」

  2人も感嘆の声を漏らした。


  ギギィ


 またしても不気味な音を立てて扉を開けた2人。そこは、舞踏場のような場所だった。


 蜘蛛の巣が張ってあるが、その大きさと輝きは色褪せていないシャンデリア。色鮮やかなステンドグラスは、少し割れていて全容は分からない。大理石の床は、今なおその美しさを見失っていない。


「わぁ!すげー!」

  カイトの声は反響し、ホール全体に広がった。


「ここで、舞踏会とかやってたのかな?」

  コツコツと足音を鳴らしながら、ホールの中心まで歩いていくトウヤ。


 扉から対称にある大きな窓から、冷たい風が吹く。ガタガタと窓枠が揺れるが、2人は慣れたのだろう。動じない。


 バタンッ


 大きな音を鳴らして、扉が閉まった。


 2人は扉に駆け寄り、開けようとするがなかなか開かない。


「おい!どういうことだよ!」

  トウヤが叫ぶ。


「あれじゃない?強風でドアが閉まるやつ。風も吹いてたしさ」

  至って冷静に答えるカイト。


「なんだよ。そんなことかよ」

  カイトの様子を見て、トウヤは落ち着いたようだ。


「だから、しばらくしたらドアも開くようになると思うよ。安心して」

 トウヤを安心させるように語りかけるカイトの顔は笑顔だった。


・・・・・・・

・・・・・

・・・


 しばらく経ったあとに2人はドアを開けようとするが、ドアはビクともしない。


「おーい、開かないじゃんかよ。どうなってんだ?ほんとーによぉ・・・」

 トウヤは、動揺を隠せない。


「おかしいな?風が止んだら開くはずなんだけど・・・」


 2人分の動揺がホールを満たした時、風が勢いよく吹いて、カーテンを揺らした。シャンデリアも揺れて、ガシャガシャと音を立てた。


「なぁ、なんか変な感じがしないか?」

 トウヤが問いかける。


「うん。背中がゾクゾクするみたいな?感じがあるよ」


 カイトもトウヤと同じことを思っていたようだ。


 しかし、まだ風は吹いてある。むしろ、強くなってある。


 カーテンがバサァと翻った時、そこには1人の男女とも分からない人が立っていた・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る