第七話 交差する運命

「タケル!カイト!アスカ!」


「おう!2人とも!」

  マコトの呼び声にタケルが反応する。


 体育館から廃校舎の二階まで来たエマとマコトは、3人に会えたことでホッと安堵のため息を吐いた。


「じゃ、三階に行こうか!」


 タケルのやる気に満ちた声で、なんとなく帰る雰囲気だったのが、ぶち壊された。マコトは行きたくなさそうな様子だったが、タケルに押され、しぶしぶ行くことを決めた。


 コツ コツ コツ コツ


 階段を上がるごとに、足音が響く。当たり前のことだが、なんだかとても聞き慣れていない音に5人は聞こえた。


 一部屋ずつ確認していく5人。そして、『1年5組』と看板のある教室に入った。相変わらず、蜘蛛の巣が張ってあり、床はギシギシと鳴る。


「どの教室もボロボロだねー」

「うん、廃校舎って感じだよね」


「黒板に字書いてあったんだな!」

「相合い傘とか書いてあるよ。古っ!」

「大塚・・・名前までは読めないや」

  各々楽しそうに会話をする。そこで、カイトがおもむろに口を開いた。


「なぁ・・・もう、帰らないか」

  ぽつりと溢れた言葉は、静かになっていた教室に広がっていった。


「何?ビビってたの?」

  タケルの煽りが言い終わるか終わらないか、その時


 ガンっ!  カラ カラン


「きゃあああぁぁぁ!」

「何っっっ!!」

  アスカとエマの声が重なって響く。


 一同ピタリと止まり、何が起きているのか分かっていない。ゆっくりと首を動かして、音の鳴った方へと向く。


「チョ、チョーク入れが落ちただけだよ!」

  マコトの説明に安堵のため息がこぼれ落ちた時、


 ガラガラガラガラ ガンっ!


 誰も触れていないこの教室唯一のドアが、勢いよく閉まった。タケルが素早く動きいてドアに近寄り、引いてみるがびくともしない。


「あ、開かない!どうなってるんだ!」


「え、どういうこと?」

  アスカはドアに近寄ろうとするが、ある異変に気付いた。


「か、身体が動かない!?」


 身体が動かせない状況の中、さまざまな声が響く。


「ここに来ようって言ったの誰?アスカでしょ?アスカのせいでこんな目に遭わなきゃならなくなったじゃない!責任とってよ!」

  エマの罵倒が響く。


「私に押し付けないで!結局、みんながオッケーしたから来たんでしょ?」

  それに対して、負けじとアスカの声も響く。


 この中で、何故か身体が動かせるカイトのことはみんなの眼中にない。


「2人ともケンカしても仕方ないだろ。今はこれをどうするかを考えない・・と・・・」

  マコトの声に2人は静かになったが、その声の最後のほうは驚愕と畏怖がにじんでいる。


 ソレは、突然現れた。まるで、最初から存在していたかのように。ソレは5人を見た後、カイトの目を見つめた。


 ソレは健康そうな細い体型、短い頭髪、フレームの薄いメガネをしていた。


「やぁ、久しぶり・・・」

  男性の無機質な声が響く。


「ト、トウヤ・・なのか・・・?」

  カイトがポツリと言葉を溢す。


「僕の事なんて、忘れちゃった?カイトくん!」


 男性の雰囲気が、ガラッと変わった。優しそうな雰囲気が一気に、威圧するような雰囲気に変わる。


「ト、トウヤ、違う!忘れたわけじゃない!忘れるはずがないだろう!あの時を忘れた事なんて一度も無い!」

  カイトが、必死になって弁解する。


「忘れた事がないねぇ。よく言うよ!」

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