第四話 探検
ついに、8月13日がやってきた。その日は、じめっとした暑さで、セミがうるさいほど鳴いている日だった。
夜8時、夜空には綺麗な満月が浮かんでいる。もう外は真っ暗で満月の光と公園にある街頭と周りの住宅の窓から漏れる光だけが外を照らしていた。そこに、1人、また1人と集まっていく人影。例の5人だ。エマ、アスカ、タケル、マコト、カイトの5人は、恐怖などの感情よりも興味・好奇心の感情が勝っているのか、とても楽しそうにしている。
そして、一同は廃校舎へと歩き出した。道中は、お喋りをしながら楽しそうにしていた。今から廃校舎に行く人たちには到底見えない。
やがて、廃校舎が見えてきた。真っ暗で全貌はハッキリと見えないが、使い古された校舎そのもので、今は特段怪しいところは見当たらない。
「夜に見るのってなんか違うねー!雰囲気やばぁ」
エマの感嘆にみんなが同意する。
「確かに。昼間はただのオンボロ校舎だけど、夜は怪しい雰囲気もあって怖いなあ」
マコトが詳しく言ってくれた。
「待って、入る前に記念写真撮ろうよ!」
唐突なアスカの提案に4人はのり、アスカのスマホで写真を撮る。
カシャ
一同、撮った写真を見るが、怪しいところなどなく、ただの廃校舎前で撮った写真だった。
「これは、何にもないね。心霊写真とか撮れたら、面白そうだったのになぁー」
「なぁ、そろそろ入ろうぜ。いつまでもここにいるわけじゃないでしょ?」
タケルの冗談に聞こえない冗談を聞き流し、ドアを開けていくマコト。
ギィィ
古びてすぐにも崩れそうな正面玄関のドアは、不気味な音を立てて動いた。
「えぇーすごい!いかにもお化けが出そうなかんじある!」
エマは興奮を隠さず、最初に校舎に入り、周囲をキョロキョロと見回している。
一歩踏み出す度に、足音ひとつひとつがフロア全体に反響している。廃校舎は吸い込まれそうなほど静かで、気味悪かった。
タケルがマコトと持ってきた懐中電灯を全員に渡したことを確認した。そして、この建物の案内表を見て言う。
「ここ、三階建てなんだな」
「意外と大きいんだねぇ」
「全部見てたらキリがないね」
タケル、アスカ、エマの話を聞いていたカイトが、名案を閃いたようだ。
「じゃあ、2組に分かれて一階と二階を見て回って、全員で三階を見回るのはどうだ?」
「それなら、私はマコト君と行きたーい!」
エマは頬を紅潮させながら言った。空気を読んだアスカが、すぐさま言った。
「じゃあ、マコト君とエマのペアと私とタケルとカイトの組で廻ろうよ!いいよね?」
話し合いの結果、一階をエマとマコトの2人が、二階をアスカ、タケル、カイトの3人が見回ることになった。
話し合いが終わった時、まるで反論があるかのように、冷たい風が5人の足元を駆け抜けていった。
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