第二話 放課後

 ん?私呼ばれた?と言っても、誰に呼ばれたかはなんとなく想像はつく。エマでしょ?


 2メートルも離れていない距離から、茶髪の髪をポニーテールにして、クリクリの瞳を輝かせながら走ってきた女子、エマは勢いよく喋り出す。


 あー、可愛い。ちなみに、エマは男子にモテているが全く気づいてない。羨ましいぞ、コノヤロウ!


「はぁー、もう先生ったら話長いよー。おかげでエマと話す時間が減った。サイアク!」


「時間は、いっぱいあるでしょ?なんか、すごい訴えかけてたから、いちおう聞いてあげなよ?」


「え、全く聞いてなかったw」


「ズェッたい近づくなよ?ズェッたいに!ってめっちゃ、強調してて面白かったよーw」


「もう、アスカったら変な顔になってるよーw」


あははと、2人分の笑い声がもうほとんど人のいない教室に反響している。そこに、黒髪の毛先がくるっとはねている優しそうな男子、マコトと、短いストレートの黒髪で明るい雰囲気の男子、カイトが寄ってきた。


「2人ともうるさいわ。廊下まで響いてだぞ」


「もー誰もいないし、いーんじゃない?マコト、そんなに硬くならなくて。それより、なんの話?先生がどうちゃらこうちゃらって聞こえたけど・・・俺らも混ぜてよ」


 マコトとカイトは椅子に座り、話に混ざっていく。アスカが最初に口を開いた。


「ズェッタイって先生言ってて、面白かったなって話してたの」


「あれは、もはやギャグにしか聞こえなかったな」

  マコトの言葉に、笑いが溢れた。


「てか、そんなに危ないの?」

  エマが言った。


「危ないって・・・先生が言ってた廃校舎のこと?」

  続けて、カイトが言った。


「そうそう!あ、カイトは今年転校してきたから、知らないのかー」

  マコトが言った。


「名物スポットがあるんだよ。ずっと前に使われなくなった校舎なんだけど、いろんな噂がありすぎて、名物スポットになったんだよねー。あ、でも、もう取り壊すとか、壊さないとか。今、問題になっているらしいよ」


 エマ、アスカ、マコト、カイトの4人以外から声が発せられた。4人は特別驚くことはなかった。


 そのまま声の主は、まだ教室に残っていた数少ない生徒、黒髪で前髪は横に流していて人を寄せ付けない雰囲気を纏う男子、タケルは、まるでバカバカしいと言わんばかりに首を振った。そして、そのまま自然な形で会話に入っていった。


 彼は信じてないようだ。

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