魔王と姫
アデラは王宮の中心、玉座に招かれた。
2年前に招かれて、逃げ出した王宮、そして玉座の間。
緊張して身を固くするアデラだが、ラファールは近づくこともしない。
ラファールは、値踏みをするような目で、実の娘であるアデラを眺めている。
ラファールの使い魔がアデラの近くに着て、落ち着きのない声で話す。
「アデラ様の身柄は現在交渉の材料になっております、魔王様は人間ごときとの交渉について、律儀にそれを守るお考えで、アデラ様の身柄が魔王様に移るまでは手を触れることもしないということです」
「交渉の材料?どういうことだ」
「人間の自治を認める代わりに、アデラ様はこの王宮に住んで頂きます」
「そうか、それで人間達は救われるのか」
「はい、交渉期限は2日でございます」
数々の戦いをくぐりぬけた後だから分かる。魔王ラファールの強さは次元が違う。おそらく、ナギとカースとアデラ、3人で挑んでも勝てないだろう。クシャルよりもさらに高い次元にいる。
ラファールがアデラに下がってよいと合図を出す。
アデラは使い魔に案内されてゲストルームへ通される。
広いゲストルームには、ゆっくり足を伸ばせるバスルームまで付いていた。
アデラは真っ先にバスルームへ行く。
お湯が出る。こんなことは何年ぶりだろうか。
体を洗っていると、シロがバスルームへ入ってくる。
「王宮の生活に憧れる女性は都に溢れかえっています、アデラ様は幸せ者ですね」
「何が言いたい?」
「ラファール様がアデラ様の対価として人間の自治を認めるというのは、それだけアデラ様の価値を認めているということ、今後アデラ様がいる限り人間も平和に暮らせるでしょう」
「政略結婚か」
「人間とのことは忘れてしまう方が良いかと、アデラ様にとっては必要のないことでございます」
「シロ」
「はい」
「出て行け、もう二度と顔も見たくない」
「アデラ様」
「出て行け」
「はい」
アデラはバスタブに入りお湯につかりながら、カースのことを考えていた。
会いたい。
涙が出た。
アデラにとっては、初めて流す涙だった。
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